・グラム陰性らせん状細菌
・病原性
1)急性胃炎・慢性胃炎の原因の一つ
2)胃・十二指腸潰瘍の再発・治癒遷延因子
3)胃癌との関連性
“確実な発ガン性因子”グループ1 (WHO, 1994)
4)胃MALTリンパ腫との関連性(除菌による縮小化)
・日本人の感染率
10%以下(10歳未満),10-20%(10-30歳),20-30%(30歳代),60%以上(40歳以降)
ココアには歯周病菌を始め多くの抗菌効果が知られています。
このレポートでは、ココアのHelicobacter pylori(以後、ピロリ菌と呼びます)に対する抗菌効果について説明します。
ピロリ菌は胃炎や胃潰瘍に密接にかかわり、胃癌の危険因子としても認定されています。
2000年11月に「胃潰瘍」、「十二指腸潰瘍」患者のピロリ菌除菌が保険適用になり、また、2013年2月には「慢性胃炎」でのピロリ菌除菌が保険適用に加えられました。身近な食品であるココアを飲むことで、胃の中のピロリ菌に対しても抗菌効果が期待されるのではと考えて、研究を開始しました。
・グラム陰性らせん状細菌
・病原性
1)急性胃炎・慢性胃炎の原因の一つ
2)胃・十二指腸潰瘍の再発・治癒遷延因子
3)胃癌との関連性
“確実な発ガン性因子”グループ1 (WHO, 1994)
4)胃MALTリンパ腫との関連性(除菌による縮小化)
・日本人の感染率
10%以下(10歳未満),10-20%(10-30歳),20-30%(30歳代),60%以上(40歳以降)
1983年にオーストラリアのロビン・ウォレンとバリー・マーシャルがヒトの胃から、らせん状の菌を培養することに成功しました。
後に、この菌はヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori、以下ピロリ菌)と呼ばれ、二人は、ピロリ菌の発見により2005年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。日本人成人の約50%が感染しており、胃炎、胃・十二指腸潰瘍の原因の一つとして考えられています。
また、胃癌との関連性においても確実な発癌性因子として認定されています(WHO:世界保健機構、1994)。日本人の感染率は先進諸国の中では比較的高く、戦後の衛生状態の悪さがその一因として考えられています。
まず、ピロリ菌が胃内の細胞に感染する最初のステップである胃上皮細胞への付着を抑制できるかどうかについて調べました。胃上皮細胞としてはヒト胃癌細胞株(HGC-27)を用いました。
培養したHGC-27に段階的に希釈した各種嗜好飲料の熱水抽出液を一定量加え処理した後、蛍光標識したピロリ菌の懸濁液を加え、HGC-27とピロリ菌とを1時間反応させました。反応後、HGC-27に接着しなかったピロリ菌を除去し、蛍光顕微鏡下で細胞に接着したピロリ菌数を測定しました。また、嗜好飲料熱水抽出液を加えずに同様に処理した時の細胞に接着したピロリ菌の数を対照の接着菌数としました。
試験の結果、紅茶、ウーロン茶、ココアが高い効果を有していましたが、ココアが最も少ない添加量でピロリ菌の接着を阻害し、ピロリ菌の胃上皮細胞への付着抑制効果が最も高いことが分りました。ちなみに、通常我々が飲んでいるココア飲料のココア含有量は3%〜10%程度であり、これを遠心した上清(上澄み液)を熱水抽出液と呼んでいます。
次に、ピロリ菌を増殖培地で培養し、そこにココアの熱水抽出液を添加しピロリ菌の増殖に対する影響を調べました。増殖培地のみではピロリ菌は増殖を続け24時間後には約30倍に増殖しました。
一方、ココアを添加した場合、添加量が通常の飲用濃度付近である3.5%でピロリ菌に対して顕著な増殖抑制効果を示しました。また、ココアを10%添加した場合には、更に強い増殖抑制効果が認められ、培養1時間後で約80%のピロリ菌が死滅することが明らかとなりました。
マウス | ピロリ菌 胃内定着割合 | |
---|---|---|
3日後 | 7日後 | |
対照群 |
2/4 | 4/4 |
10%ココア投与群 | 0/4 | 0/3 |
更に、ココアが実際にピロリ菌の胃内への定着を阻止することを以下の実験で示しました。 ピロリ菌は無菌マウスの胃内で感染、定着をすることが知られており、ココアとピロリ菌を同時に無菌マウスに投与し、ココアによるピロリ菌の無菌マウス胃内への定着抑制効果を調べました。ココアを10%添加したBHI培地(ピロリ菌増殖培地)にピロリ菌を懸濁し、無菌マウス1匹当たり約109個のピロリ菌を3日間連続投与しました。10%ココア添加群は7匹、対照群として8匹の無菌マウスをそれぞれ用いて実験を行いました。ココアを添加しない対照群では、投与終了後3日目では4匹中2匹にピロリ菌感染が認められ、7日後には残りの4匹中全てにピロリ菌が感染していました。
一方、ココアを投与した群では、3日後も7日後も全ての無菌マウスでピロリ菌の感染は認められませんでした。ココアによるピロリ菌の無菌マウス胃内への定着を阻止する効果は、胃内に於けるピロリ菌増殖抑制効果だけではなく、既に報告している胃上皮細胞への接着抑制効果も大きな影響を与えていると思われ、これらの総合的な結果だと考えています。
培地 | 生菌数(×107CFU/ml) | |
---|---|---|
培養0時間後 | 培養24時間後 | |
基礎培地1) | 4.1±0.872) | 34 ±3.1 |
基礎培地+3.5%ココア可溶性成分 | 5.0±1.1 | 0.011 ±0.001 |
基礎培地+3.5%ココア不溶性成分 | 4.2±0.40 | 4.7 ±0v.72 |
基礎培地+10%ココア可溶性成分 | 4.4±0.87 | ND3) |
基礎培地+10%ココア不溶性成分 | 5.6±1.1 | 3.2 ±0.83 |
今までの実験結果から、ココア熱水抽出液が試験管内での増殖抑制効果を示すこと、胃上皮細胞へのピロリ菌の接着を抑制すること、更にココアの懸濁液が無菌マウスの胃内への定着を阻害することが明らかとなりました。
次の興味として、ココアに含まれるどのような成分がピロリ菌の増殖抑制効果を有しているかに注目して研究を進めました。
まず、増殖抑制効果を有する成分がココアの可溶性画分(熱水抽出液)のみにあるのか、不溶性画分にも存在するのかを調べたところ、可溶性画分にのみ大きな増殖抑制効果が認められました。
一方、不溶性画分(主としてリグニンなどの不溶性食物繊維)には静菌効果は認められましたが増殖抑制効果は認められませんでした。
これらの結果から、ココアの可溶性成分が増殖抑制効果を持つことが示されました。
ココアの可溶性成分に含まれ、近年最も注目を集めている機能性成分の一つがココアポリフェノールです。そこでわれわれもピロリ菌増殖抑制効果とココアポリフェノールとの関係について検討しました。 ポリフェノールの研究でしばしば用いられる実験方法に従い、ココアの80%エタノール抽出液から順にクロロホルム、酢酸エチルでの抽出を行い最後に残った水層を残存水層画分とし、それぞれ有機溶媒画分のピロリ菌増殖抑制効果を調べました。ちなみに、緑茶、ウーロン茶の場合、ポリフェノールは主に酢酸エチル層に抽出されると報告されています。
最もポリフェノール含量が多かった残存水層はピロリ菌に対して菌数を増加させない静菌効果を有してはいましたが、増殖抑制効果と呼べるような強い活性は有していませんでした。この残存水層には主に重合度の高いポリフェノールが含まれていると考えられています。一方、酢酸エチル層には主に重合度が低いポリフェノール類が含まれていると思われますが、ほとんど増殖抑制活性は認められませんでした。最もピロリ菌増殖抑制活性が強かったのはクロロホルム層ですが、ポリフェノールとしては80%エタノール抽出液の約12%しか回収されていないことが分かりました。
更に、ポリフェノール吸着剤であるPVPP(polyvinylpolypyrrolidone)を用い、ココア熱水抽出液の吸着処理前サンプルと吸着処理後のポリフェノール除去サンプル(ポリフェノールの約80%が除去された)とのピロリ菌増殖抑制効果を比較しました。その結果、PVPP処理によるピロリ菌増殖抑制効果の低下は小さく、ココアの場合、ピロリ菌増殖抑制効果に対するココアポリフェノールの寄与は小さいと判断しました。
ココアに含まれるどの成分がピロリ菌に対する抗菌効果を有しているかを検討しました。先に示しましたポリフェノール含有量が少なくピロリ菌増殖抑制効果が最も強いクロロホルム層抽出画分を出発試料とし、ODSカラムを用いて増殖抑制効果の強い画分を集め、LC/MSにより分析した結果、この画分には各種の遊離脂肪酸が含まれていることが明らかとなりました。ココアに含まれる主な遊離脂肪酸は飽和脂肪酸としてはパルミチン酸とステアリン酸、不飽和脂肪酸としてはオレイン酸とリノール酸の4種が存在しています。これらの内、どの遊離脂肪酸がピロリ菌殺菌活性を有しているかを検討するために市販の試薬を購入し、それぞれのピロリ菌殺菌効果を測定しました。その結果、不飽和脂肪酸であるオレイン酸、リノール酸には強い活性があり、飽和脂肪酸であるパルミチン酸、ステアリン酸には活性がないことが明らかになりました。
なお、脂肪酸がグリセリンに結合したトリグリセライド(中性脂肪)ではピロリ菌殺菌効果を有していないことを確認しました。
カカオ豆の発酵過程やココア製造工程で遊離脂肪酸が生じることはよく知られています。そのようにして 生じた遊離脂肪酸は、ココアのようなアルカリ処理を行い、pHを中性付近にした場合、その一部は塩の形で存在していると考えられます。遊離脂肪酸塩にも同程度のピロリ菌殺菌効果が存在します。
ココアに含まれる遊離脂肪酸がピロリ菌増殖抑制効果を示す主な成分である可能性が高くなったので、今までとは異なる方法でココア成分を分画し、その可能性を確かめました。
ココアからまず98%アセトンで脂溶性物質を抽出した後、更にその残渣から50%エタノールを用いてポリフェノールを含む水溶性物質を抽出しました。98%アセトン抽出画分および50%エタノール抽出画分それぞれに含まれる遊離脂肪酸量とポリフェノール量を調べ、同時にピロリ菌増殖抑制効果を調べました。
98%アセトン 抽出画分 |
50%エタノール 抽出画分 |
|
---|---|---|
ピロリ菌殺菌効果 の強さの比較 |
1.1 | 1 |
遊離脂肪酸量 | 323μg/ml | 166μg/ml |
ポリフェノール量 | 0.0mg/ml | 1.3mg/ml |
98%アセトン抽出画分にはポリフェノールは検出限界以下の量しか含まれておらず、50%エタノール画分には遊離脂肪酸とポリフェノールが共存していることが明らかとなりました。この両者のピロリ菌殺菌効果を比較したところ、98%アセトン抽出画分が50%エタノール画分に比較してわずかに強いことが分かりました。また、それぞれ画分の脂肪酸組成を調べ、その脂肪酸組成に従って市販されている遊離脂肪酸のミクスチャーを作成しそのピロリ菌殺菌効果を調べたところ、80%以上の活性が遊離脂肪酸で説明できることがわかりました。残りの活性についてはポリフェノールやその他の水溶性物質の関与が考えらえます。
対象者 | ピロリ菌陽性である胃・十二指腸潰瘍患者 |
---|---|
被験者数 | ココア摂取群 31名 ココア非摂取群 22名 |
投与物質 | 2剤及びココア |
投与薬剤 | 胃酸分泌抑制剤(ランソプラゾール、60mg) 抗生物質(クラリスロマイシン、400mg ) |
投与期間 | 1週間/朝晩2回 |
ココア飲用量 | 1日3杯/食間に飲用 |
飲用期間 | 除菌療法時及び除菌療法後約1ヶ月間 |
除菌判定 | ラピッドウレアーゼテスト、ピロリ菌培養試験 及び病理学的検査で全て陰性の場合 |
2000年11月に「胃潰瘍」、「十二指腸潰瘍」患者のピロリ菌除菌が保険適用になりました。また、2013年2月には「慢性胃炎」でのピロリ菌除菌が保険適用に加えられました。ピロリ菌が発見されて以来、その除菌方法について多くの試みがなされて来ました。この表は、ピロリ菌除菌が保険適用になる前に行われていた2剤 (胃酸分泌抑制剤+抗生物質)除菌時にココアを同時に飲用した時の除菌効果の改善を調べた時の試験方法です。なお、この試験で使ったココアは市販ミルクココアと比較して遊離脂肪酸量を約2倍に高めたココアを用いました。
2剤除菌では除菌成功率は低く、45.5%でした。しかし、除菌治療時にココアを一日に3回飲用していただくと除菌成功率は61.3%に上昇しました。しかし、統計的な有意差は認められませんでした。
対象者 | ピロリ菌陽性である胃・十二指腸潰瘍患者 |
---|---|
被験者数 | ココア摂取群 18名 ココア非摂取群 16名 |
投与物質 | 3剤及びココア |
投与薬剤 | 胃酸分泌抑制剤(ランソプラゾール、60mg) 抗生物質2剤(クラリスロマイシン、400mg アモキシシリン、1500mg) |
投与期間 | 1週間/朝晩2回 |
ココア飲用量 | 1日3杯/食間に飲用 |
飲用期間 | 除菌療法時及び除菌療法後約1ヶ月間 |
除菌判定 | ラピッドウレアーゼテスト、ピロリ菌培養試験 及び病理学的検査で全て陰性の場合、または、 尿素呼気試験で陰性の場合のみ陰性と判定 |
更に、ピロリ菌の除菌が保険適用後行われた3剤(胃酸分泌抑制剤+抗生物質2剤)除菌治療と同時にココアを飲用する試験を実施しました。
3剤除菌は除菌成功率が81%と高く、ココアを同時に飲用すると89%にまで上昇しました。しかし、統計的な有意差は認められませんでした。いずれの臨床試験でも症例数が十分でなく統計学的な有意差は認められなかったが、ココア飲用がピロリ菌除菌率の改善効果を示す傾向が認められました。
対象者 | 胃腸症状を有しない健常人でピロリ菌保菌者 |
---|---|
被験者数 | ココア摂取群 29名 対照群 26名 |
投与物質 | ココア |
ココア飲用量 | 1日1杯/夕食後2時間位後に飲用 |
飲用期間 | 1ヶ月間 |
測定項目 | ピロリ菌菌数増減の判断項目として、 以下の項目を測定 尿素呼気試験、ペプシノーゲンⅠ/Ⅱ比、 抗ピロリ菌抗体価 |
次に、胃腸症状を有しないが、ピロリ菌を保菌している健常人にココアを毎日一杯飲んでいただき、尿素呼気試験の結果からピロリ菌菌数の増減を推定しました。
ココアを飲まない対照群で試験開始1か月経過後の尿素呼吸試験測定値は、殆ど変化しなかったが、ココア飲用群では試験開始1か月経過後の尿素呼気試験測定値が約15%低下しました。尿素呼気試験測定値は感染ピロリ菌数をある程度反映すると言われており、対照群との間で有意差は認められなかったものの、尿素呼気試験の測定値は低下し、1日1杯のココアを飲むことにより感染しているピロリ菌数を減少させる可能性が示唆されました。一方、1か月という試験期間が短いことも一因だと思われますが、ペプシノーゲンⅠ/Ⅱ比、および抗ピロリ菌抗体価に大きな変化は認められませんでした。
( 寒天平板希釈法、NCCLSに準拠 )
ココア濃度(%) | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
検体番号 | 10 | 5 | 2.5 | 1.25 | 0.64 | 0.32 | 0.16 | 0.08 | 0.04 | 0.02 | 0 |
1 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | + | + | + |
2 | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + | + | + |
3 | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + | + |
4 | ー | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + |
5 | ー | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + |
6 | ー | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + |
7 | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + | + |
8 | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + | + | + |
9 | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + | + |
10 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | + | + | + |
11 | ー | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + |
12 | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + | + |
13 | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + | + | + |
14 | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + | + | + |
15 | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + | + |
ピロリ菌の除菌が保険適用になり、多くの除菌治療が実施されていますが最近は除菌の成功率が徐々に下がっていると言われています。その一つの原因が抗生物質に対する耐性菌の存在です。そこで、抗生物質耐性菌に対するココアの殺菌効果を調べました。
まず最初に、株式会社エスアールエルに依頼し、同社が保有しているピロリ菌保菌者から分離したピロリ菌臨床分離株15株に対するココア熱水抽出液の殺菌効果を調べました。その結果は、 2株に対し特に高い効果がありましたが、他の13株に対してもココア熱水抽出液の最小阻止濃度(MIC)は0.64%から2.5%であり、通常飲用しているココアの濃度が3〜10%程度であることを考えると、臨床分離株に対しても高い殺菌効果を示すことが明らかになりました。
検体番号 | 性別 | 年齢 | クラリスロマイシン最小阻止濃度 (μg/ml、E-testによる) |
|
---|---|---|---|---|
ココア 0% | ココア 0.5% | |||
1 | ♂ | 不明 | 0.064 | 0.016 |
2 | ♂ | 65 | 64 | 32 |
3 | ♂ | 51 | 8 | 4 |
4 | ♂ | 52 | 12 | 12 |
5 | ♀ | 32 | 0.016 | ≦0.016 |
6 | ♂ | 29 | ≧512 | 48 |
7 | ♂ | 不明 | 0.016 | ≦0.016 |
8 | ♂ | 49 | 0.016 | ≦0.016 |
9 | ♂ | 73 | 24 | 12 |
10 | ♂ | 71 | 16 | 8 |
11 | ♂ | 58 | 0.016 | ≦0.016 |
12 | ♂ | 41 | 0.016 | ≦0.016 |
13 | ♂ | 29 | 0.016 | ≦0.016 |
14 | ♂ | 60 | 0.023 | 0.016 |
*:除菌治療に用いられている抗生物質
次に、ピロリ菌除菌に用いられている抗生物質クラリスロマイシンにココア熱水抽出液を0.5%添加し、その併用効果を調べました。その結果、1検体を除き、他のすべての検体でクラリスロマイシンの最小阻止濃度が減少しました。
つまり、ココアと併用することで、クラリスロマイシンの殺菌効果をより高めることが示唆されました。
( 寒天平板希釈法、NCCLSに準拠 )
ココア濃度(%) | ||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
検体番号 | MIC* | 性別 | 年齢 | 10 | 5 | 2.5 | 1.25 | 0.64 | 0.32 | 0.16 | 0.08 | 0.04 | 0.02 | 0 |
1 | ≧32 | ♂ | 28 | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + | + | + |
2 | ≧32 | ♂ | 不明 | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + | + |
3 | ≧32 | ♀ | 67 | ー | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + |
4 | 16 | ♀ | 78 | ー | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + |
5 | ≧32 | ♂ | 44 | ー | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + |
6 | 8 | ♀ | 69 | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + | + |
7 | ≧32 | ♂ | 69 | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + | + |
8 | 16 | ♂ | 40 | ー | ー | ー | ー | ー | + | + | + | + | + | + |
*:クラリスロマイシンの最小阻止濃度
(1μg/ml以上がクラリスロマイシン耐性菌を示す)
更に、今問題となっているピロリ菌のクラリスロマイシン耐性株に対するココアの殺菌効果を調べました。クラリスロマイシンの最小阻止濃度(MIC)が8μg/ml以上のクラリスロマイシン耐性臨床分離株8株に対し、ココア熱水抽出液の殺菌効果を調べました。
その結果、ココアの通常飲用濃度よりもかなり低い濃度でも高い殺菌効果が認められました。これら一連の結果は、ココアのピロリ菌殺菌メカニズムはクラリスロマイシンのピロリ菌殺菌メカニズムとは異なることを示しており、クラリスロマイシン耐性株への殺菌効果やクラリスロマイシンとの併用によるより高いピロリ菌殺菌効果が期待できると考えられます。