「カイコでヒトの何がわかるのだろう?」と不思議に思う方も多いかもしれませんが、カイコは見た目とは裏腹にヒトに似て、ヒトの主たる臓器に相当する器官組織を備えています。
そして、体内動態が似ていて、医薬品の効果や毒物・病原体に対する感受性が人に近い特質を持っています。
また、カイコは抗体形成器官を持たない(=獲得免疫機能のない) 無脊椎動物であり、病原体への反応は自然免疫系に依存しています。そのため、カイコは自然免疫の評価に適しているのです。
株式会社ゲノム創薬研究所では「自然免疫が活性化すると、カイコの筋肉が収縮する」という発見をして自然免疫の活性化を評価する測定方法を確立しており、これに基づいてカイコの筋収縮を指標とした自然免疫を高める物質を探索しています。
免疫は、大きく「自然免疫」と「獲得免疫」の2つに分けられます。
自然免疫とは生まれつき備わっている免疫反応で、ウイルスや細菌などの敵が体内に入ってくると、速やかに駆けつけてやっつける働きをします。
一方の獲得免疫は後天的に獲得されていく免疫反応で、自然免疫から逃れたウイルスや細菌などの敵に対する抗体を作って攻撃するものです。
方法
酒粕+米麹のサンプルをカイコに投与し、効果測定を行う
結果
酒粕+米麹に自然免疫促進活性があることが確認されました
カイコは自然免疫を高める物質が注射されると、筋肉が収縮するので、その収縮の度合で免疫の活性度を測定できます。
酒粕+米麹の比活性数値は17で、これは緑茶集出液の約3倍の値で、決して低くない数値です。
今回のカイコを利用した自然免疫活性化試験によって好ましい数値が測定された「酒粕と米麹」は、日本の伝統的な飲料、甘酒の主原料です。
これまでも、栄養価の高さから「飲む点滴」等と言われて健康効果に注目が集まっていましたが、今回の結果で自然免疫機能を活性化する効果が示唆されました。
参考文献
Drug Discov Ther. 2017 Nov 22;11(5):288-290.
Evaluation of the innate immune-stimulating activity of amazake using a silkworm muscle contraction assay.