フィギュアスケートの大会やイベントが目白押しの季節になってきました。美しくしなやかな演技に必要なプロポーションを維持するためには、一体どのような心がけが必要なのでしょうか?
一流スケーターを始め、多くのスポーツ選手の指導を担当する、アスレティックトレーナーの牧野講平先生に伺ってきました。
監修
森永製菓株式会社ウイダートレーニングラボ
ヘッドパフォーマンススペシャリスト
牧野 講平 先生
ヘッドパフォーマンススペシャリスト
1979年、札幌生まれ。2003年森永製菓株式会社ウイダートレーニングラボと契約。東京、北海道でのトレーナー活動を経て、2008年に浅田真央選手(フィギュアスケート)と専属契約し、バンクーバーオリンピックにも帯同。 2011年より同施設ヘッドパフォーマンススペシャリストに就任し、有村智恵選手(ゴルフ)、前田健太選手(プロ野球)、高梨沙羅選手(スキージャンプ)、宮里美香選手(ゴルフ)、太田雄貴選手(フェンシング)など様々なトップアスリートをサポート。2015年に日本コンディショニング協会の理事に就任し、コンディショニングの普及活動にも従事。学生やトレーナー、指導者に向けた講演活動も行っている。
1979年、札幌生まれ。2003年森永製菓株式会社ウイダートレーニングラボと契約。東京、北海道でのトレーナー活動を経て、2008年に浅田真央選手(フィギュアスケート)と専属契約し、バンクーバーオリンピックにも帯同。 2011年より同施設ヘッドパフォーマンススペシャリストに就任し、有村智恵選手(ゴルフ)、前田健太選手(プロ野球)、高梨沙羅選手(スキージャンプ)、宮里美香選手(ゴルフ)、太田雄貴選手(フェンシング)など様々なトップアスリートをサポート。2015年に日本コンディショニング協会の理事に就任し、コンディショニングの普及活動にも従事。学生やトレーナー、指導者に向けた講演活動も行っている。
「動きづくり」と「軸づくり」
競技にもよりますが、「何筋を鍛えましょう」と細かい筋肉をターゲットにするよりは、「動きづくり」をする方向になってきています。動きというのは、結局はどこかの筋肉だけが動いているわけではなくて、全身の筋肉のバランスで出来上がっているからです。一部分の筋肉に特化して鍛えても、それでスポーツのうまさが変わるかというとそうではない。全身の力の入れ具合のバランスが大事です。一箇所が強くなりすぎてしまうと、弱いところがストレスを感じて逆に動きが悪くなったり、ケガにつながったりします。
たとえば浅田選手の場合、得意技であるトリプルアクセルの確率を上げるために、ジャンプという動きを紐解き、その動きを陸上に持ってきて、どこに気をつければ失敗しないのか、という流れでトレーニングをしていくイメージ。半分は技術トレーニング、半分はフィジカルトレーニングというような意味合いでやっています。
最近では「体幹トレーニング」という言葉を聞く機会が増えていると思いますが、僕らは「軸づくり」と呼んでいます。どんな動きをするにしても、軸が一本しっかりしていれば修正が可能になる。ひとつの動きが次の動きにもつながってくるのです。
トレーニングとコンディショニングの割合は1:1
身体のボリュームという視点でいうと、トレーニング量が増えると筋肉がどんどん大きくなってしまう、そうするとゴツゴツした感じになってしまうので、量は少なく効率よく行っています。10回2セットのトレーニングであれば、10回1セットでいかに効率よくトレーニングするか、というように。
また、本当に鍛えるためのトレーニングと、どちらかというとマッサージのようなコンディショニングをするためのトレーニングと2つの意味合いがあって、時間的割合でいうと1:1で行います。いわゆる「ケア」のことをコンディショニングと呼びますが、しなやかな身体をつくるには、やはりトレーニングのやりっぱなしは良くないのです。いかに身体をコンディショニングしていくかということにも労力を注がないと、どうしてもゴツゴツした身体になっていってしまいますし、せっかくトレーニングしてもコンディショニングをしないと、筋肉の力も出なくなってしまいます。
コンディショニングにはリンパの流れをよくする方法も取り入れています。疲労物質や老廃物を流してあげることで、ウエストのくびれが出てきたり、二の腕が細くなっていったり、肩こりが解消したり、頭痛が改善したりということにつながっていきます。
なでるだけでも代謝は上げられる!?
コンディショニングという意味で一番簡単にできるのは、「さわってあげる」「なでてあげる」ということです。マッサージの世界でも「軽擦」という手法になっていて、それによって代謝もあがり、代謝があがることで疲労もとれてきます。
リンパ節といって、リンパの流れを良くするポンプの役目をしているところがあるので、その場所を知っておくともっと効果的です。最初はリンパ節をもみほぐして、あとは、ほぐしたいところからリンパ節に向かって、流してあげるイメージでなでていくイメージです。
たとえば、ふくらはぎが太くて悩んでいるとか、脚の張りが気になるという方は、膝の裏にリンパ節があるので、ふくらはぎをマッサージする前に、膝裏をマッサージしておくと、うまくそこが流れてむくみがとれやすくなります。むくみや肩こりは、リンパ節と、そこへ向けて自分で軽擦することで改善できます。ぽっこりお腹や二の腕の悩みは、どちらかというとリンパの滞りが原因であることが多いので、軽擦などのコンディショニングが向いているといえます。
一方、ふとももが太いとかお尻がたれているという悩みは、歩き方の問題であるケースが多いので、トレーニングが効果的でしょう。
すぐにできる!おなかのリンパマッサージ
お腹にもリンパ節があり、腹横筋と呼ばれる呼吸筋が腹筋の中心からベルトのようにつながっています。
腹横筋をうまく使えていない人が世の中には多いのですが、筋力が弱まっていくと、くびれがなくなっていってしまいます。この筋肉を目覚めさせるために、簡単にできるマッサージをご紹介!
①おへその横あたりに手を置いて息を吸う。
②息を吐いたタイミングで、前から後ろの方向に向かって撫でる。
実際、体脂肪10%のアスリートがこのマッサージを1年行ったところ、なんとウエストが-10cmに!
立ちながら、座りながら、寝ながら簡単にできるので、ぜひ試してみてください。
食事もバランスよく、こまめに摂ることが大事
一流スケーターも体重コントロールはしっかりやっています。こと運動選手に関していえば、運動量が非常に多いので、普通に食べても足りないくらいです。食べられる絶対量は人によって決まっているので、その量のなかでいかに栄養バランスを良く摂っていくか、また食事をとるタイミングを一定に保つことも心がけています。
水分も栄養もこまめにとるほうが良いというのは、アスリートにとっても一般の方にとっても同じです。血糖値を一定に保つことが大事です。
ダイエットのために食事を抜いたり糖質を抜いたりすると、変な太り方をして体型がきれいになりません。くびれがなくなってしまったり、落としたいところが落ちなかったり、下半身にばかりお肉がついたり。その一瞬は結果が出るかもしれませんが、人間には恒常性という、必ず元に戻そうという働きが身体の中にあるので、抜くことによって失くなったものを取り込もうとして、そこだけ吸収率があがります。そうすると、リバウンドにもつながってしまうのです。
しなやかで美しいプロポーションに向けて、バランスよいトレーニングとケア、水分と栄養の摂取を心がけましょう。