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プロプレイヤーインタビュー Burning Core かずのこ選手

2019/10/10

人気格闘ゲーム「ストリートファイター」の世界大会「Capcom Cup 2015」で優勝するなど数多くの大会で輝かしい戦績を残し、世界的なプロゲーマーとして活躍するかずのこ選手。

『ストリートファイターⅤ』だけではなく、『ギルティギア』『ドラゴンボールファイターズ』『ブレイブルー』など複数のゲームで大会に挑み、今年の「EVO2019」では『SAMURAI SPIRITS』部門で準優勝するなど好成績を収めている。そんなトッププレーヤーとして長きに渡って活躍を続けるかずのこ選手に、日頃の練習や食生活についてお話を伺った。

――普段はどのようにゲームの練習をしているんでしょうか?

かずのこ選手:まず、どこでオフ対戦が開催されているかを確認します。それによりスケジュールも変わってきますが、オフ対戦がある場合は、そこで全力を出せるよう早めに起きて、その前はゲームをしません。他にも誰かが「オフ対戦をやりたい」と言って、何人集まるかで、その日のスケジュールが決まったりします。それに向けて準備をし、当日の練習にフルパワーを出せるよう調整します。

――オフ対戦の前に自主練はしないのは理由があるんですか?

かずのこ選手:自主練とはいえ集中すると疲れます。オフ対戦に向けて集中したほうが質の高い練習ができるからです。強い人とがっつり対戦ができる時は、100パーセントの状態でプレイしないと、せっかくの時間が無駄になると考えています。加えて、プロ相手に集中力がない状態でプレイすると、追い詰められてしまい、やってはいけない行動を咄嗟にやってしまったりして、そういった悪い癖が手に馴染んでしまいます。追い詰められたときにはできるだけリスクが少なくて、大ダメージを取られないようなプレイスタイルが身に着くよう、オフ対戦で日々鍛えています。

――拮抗した実力のプロゲーマーとやることが重要なんですね。

かずのこ選手:じゃないと追い詰められないですからね。万全の状態で強い人と対戦し、その感覚を体に馴染ませたほうがいいと個人的には考えています。

――オフ対戦はどれぐらいの時間プレイするんですか?

かずのこ選手:満足するまでです。追い詰められたときに、何度も良い手癖が出たり、これなら大会で勝てるなという達成感を得ると、今日はこれぐらいにしておこうと。逆に悪い手癖が連発したときは絶対に大会でも悪影響を及ぼすことになるので、そういう場合は、たとえ相手が帰りたそうにしても、「もう一戦お願いします」と引き留めます(笑)。

――何度かオフ対戦の現場を観させて頂いたことがあるんですが、ものすごい熱気ですよね。

かずのこ選手:お互いに良いところを見せたいですし、負けて言い訳をするとダサいじゃないですか。プロゲーマー同士で、意識を高くゲームをやっているので自然と現場はピリピリしますね。

――オフ対戦がない場合は?

かずのこ選手:ネット対戦ですけど強い相手を探すのが大変なので、そこは、プロゲーマー同士で連絡を取り合ってます。ただネット対戦は急に決まるので、集中力をキープするのは難しいですね。

――毎日、闇雲に練習すればいいというものではないんですね。

かずのこ選手:ゲームにもよります。出たばかりのゲームだと知識を得ていくことが大切なので、とにかくたくさんプレイします。最近だと、オフ対戦のない日は『サムスピ(SAMURAI SPIRITS)』は配信しながらやりこんでいます。逆に『ドラゴンボールファイターズ』や『ストⅤ(ストリートファイターⅤ)』は短い時間でプレイ内容の精度を高めていきます。もう知識を詰め込む段階の練習は終わっているので。

『サムスピ』をプレイする気分じゃないときは、他のゲームを配信しています。僕の場合、いろいろなゲームをプレイすることはモチベーションを高める効果もあるんです。モチベーションが低い状態でゲームをやると、それこそ悪い手癖が体につきやすくなってしまうので。

――食生活で意識していることはありますか。

かずのこ選手:オフ対戦の場合は、その場にいるだけで他のプロゲーマーから刺激を受けて集中できるので、食事をしても集中できますが、ネット対戦などで集中したいときは、眠気が増すので、あえて食事はしないことが多いです。

――海外大会はどうやって体調管理をしているんですか。

かずのこ選手:なるだけ早く現地入りして、着いた瞬間は眠いんですけど、絶対に夜まで寝ないようにします。そこは理論ではなく、根性で起きているところがあります(笑)。なるだけ座らないようにしたり、外を歩いたり。

――寝不足で集中力が落ちることはないんですか?

かずのこ選手:そこは個人差があると思うんですけど、僕の場合は空腹になると集中力が出るんです。海外大会は時差があるので、寝不足でも良いパフォーマンスを出せなきゃいけない。

疲れている状態で集中力を高めるにはどうすればいいかを考えたときに、自分の場合は甘い物を取ることに辿り着きました。主にチョコを食べるんですが、食べることで安心感を得られます。一種のルーティンみたいなものですね。チョコは海外でも入手できますから、環境に左右されないところもいいと思ってます。

――かずのこ選手は昨年結婚しましたが、それによって変化したところはありますか?

かずのこ選手:妻が食事を用意してくれるのは大きいですね。それまで朝と昼はカップ麺なんてことがざらで、夜さえ、きちんと食事しないでもいいやって思ってたんです。

でも今は、食欲がない時でも妻がサラダを作ってくれるなど栄養のバランス面は気遣ってくれています。やっぱり年齢に応じて肉体面もきつくなってきますからね。年々、集中を維持できる時間が減っていると感じるんです。結婚したことは、かなりプラスになってます。

――体調面も良くなったと実感しますか?

かずのこ選手:体調の良い状態が普通なので実感することは少ないですけど、良くなってると思います。常に良いコンディションでいられるのは妻のおかげなのかなと。

―お酒は飲みますか?

かずのこ選手:たまにしか飲まないですね。息抜きの仕方って人によって違うんですけど、自分の場合は格ゲー以外のゲームを配信することが面白くて息抜きになるんです。そもそもゲームが好きですからね。

でもプロゲーマーによっては、酒を飲みながら格ゲーの話をすることが息抜きになる人もいます。eスポーツ全般に言えることだと思うんですけど、大切なのはモチベーションを維持することなんです。身体を鍛えることが重要だと考える人もいますけど、鍛えなくても勝てるプロゲーマーはたくさんいますからね。そこは自分なりの方法を見つけることでしょうね。

――体は動かすほうですか?

かずのこ選手:毎日、ストレッチやラジオ体操などの準備体操はします。それをやる前は肩こりが酷かったんです。僕の所属するBurning Core(バーニングコア)は、毎週水曜日にマッサージや鍼灸治療をしてくれる専属トレーナーがいて、チームのボディメンテナンスを受けられるようになりました。それからは、肩が痛くなることはなくなりました。

肩こりが集中力の妨げになると危機感を感じていたので、感謝しています。ラジオ体操もトレーナーの先生に薦められたんです。プロゲーマーは、ゲームが強くなる方法は熟知していますけど、それ以外のことでゲームのパフォーマンス力を高める知識はゼロに近いので、それをサポートしてくれることは助かってます。

――最後に今後の展望を教えてください。

かずのこ選手:これからも、できるだけ複数の格ゲーをやって、大会にも出て、ゲーム人口の少ないゲームも盛り上げていきたいです。「強くなりたい」というのはプロゲーマーなら誰もが思っていることなので、格ゲーのコミュニティは面白いということも伝えていきたいです。