サステナブルなお仕事No.9

新聞記者

中山なかやま 由美ゆみさん


新聞記者

中山なかやま 由美ゆみさん

南極、北極を行く〝極地記者〟
氷の世界で地球環境かんきょう
を取材
南極越冬隊えっとうたいに、
日本の女性記者で初めて同行取材。
その後も南極へ、さらに北極へも
何度も行っている中山さん。
「極地」で地球環境の不思議や
未来をよくするヒントをさぐり、
見たこと、知ったことを広く伝えているよ。

※南極観測隊かんそくたいで、長い冬をふくむ1年以上、南極に滞在たいざいするグループ。夏の約2ヵ月滞在するグループは「夏隊」とよぶ。

Q1.
どんなお仕事クエッ?
朝日新聞の社会部記者として、事件や事故をはじめ、社会の様々なことを取材して記事を書きます。紙の新聞だけでなく、ウェブサイトなどでも発信しています。
日本、世界の各地へ取材に行き、南極へは3回、北極も7回行きました。とった写真や動画を使い、その体験をテレビや学校のイベントでも伝えています。

南極では、記事を書くだけでなく、他の仕事もたくさんします。雪かきをしたり、荷物を運んだり、かたづけをしたり。隊の一員として、どんなことも力を合わせるのが当たり前だからです。

1回目の南極観測隊では、氷をほって72万年分の地球の気候変動を解明かいめい。2回目は隕石いんせきをさがして拾いました。基地きち以外は人間の手が入っていない南極には、自然な地球のすがたが残っているので、歴史れきしを探るのにとても適した場所なのです。
3回目は、未来の移動式宇宙基地いどうしきうちゅうきちを組み立てることにも挑戦ちょうせん。宇宙の過酷かこく状況じょうきょうで建物を組み立て、寒さや強風にたえられるかの実験です。きびしい環境かんきょうの南極だからこそできることです。また、自分ではドローンで鳥の目線の撮影さつえいもしました。
南極で観測活動中の中山由美さん。たま岬にて
南極で観測活動中の中山由美さん。
たまみさきにて
Q2.
なぜ、そのお仕事を選んだクエッ?
やってみたい、見てみたいという好奇心こうきしんが小さい時から強かったです。
中学で英語を勉強し始めると、ちがう国の人と話せる楽しさに目覚め、大学ではドイツ語を勉強。留学りゅうがくした時、地球上に多様な文化を持つ多様な人がいることを実感しました。
世界中の国や地域ちいきで起きていること、知らなかったことを自分の目で見て、耳で聞いて伝えたいと考え、新聞記者になりました。

あと、なりたいものがたくさんあっても、全部はかなえられませんよね。でも、この仕事は、さまざまな人の話を聞くことで、その世界のことを感じられます。南極へ行くといったなかなかできない体験もできます。
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
マイナス60度以下になる南極大陸の内陸で、2カ月半近く生活した時は大変でした。でも、そんな普通ではない状況に自分がいることを楽しんでもいました。

感動は毎日です。見わたすかぎり氷と雪と空ですが、光も雲も一瞬いっしゅんたりと同じではなく、うつり変わる自然の美しさを鮮やかに感じます。
太陽が一日中顔を出さない極夜きょくやの期間がすぎ、1ヵ月半ぶりに太陽が出る瞬間しゅんかんはふるえるほどでした。ゆらめくオーロラも、原理はわかっていてもあまりに幻想的げんそうてきで、まるで生きているように感じました。

あふれ返る情報じょうほうに時間をうばわれがちな都市での生活に対し、南極での生活はシンプルで、自然と向き合ってくらすゆたかさがあります。
しかし、それは特別なことではなく、昔の人々はそうした暮らしをしていたはずです。

Q4.
どんな子どもだったクエッ?
本が好きで、小学生の時は図書館で週2回、2さつずつ借りて読んでいました。特に好きだったのは冒険ぼうけんものやファンタジー。知らない世界にいどむストーリーにワクワクしました。
外で遊ぶことも多く、探検たんけんごっこや基地作り、木登りをしたり、田んぼでザリガニをとったり。
苦手だったのは「みんなといっしょ」。みんなと同じ物を持ったり、着たりが心地悪かったですね。でも、中学・高校は自由な学校へ進み、のびのびできたことで活発になりました。

おやつは、ミルクキャラメルを食べていましたね。南極での保存ほぞん食の中にも入っていて、なつかしく思いました。寒いとカロリーをたくさん使うので、カロリー補給ほきゅうにキャラメルやチョコレートが大活躍だいかつやくします。
Q5.
未来の大人たちへ
大切なのは、まず知ること、そして考えてみることです。世の中には情報がたくさんありますが、何が良くて悪いかはそう簡単かんたんにはきめられません。例えば、自然エネルギーをふやそうと山の木を切って風車を置けば、そこにいた生き物がこまるかもしれません。情報をうのみにせず、自分で何が良いのかを考えることをして下さい。

それから、南極はどこの国のものでもないって知っていましたか?「南極条約じょうやく」で守られ、土地も資源もみんなのものです。だから争いはありません。世界中もそんな風にできないものでしょうか。

南極は簡単には行けない場所ですが、観測隊は、研究者、医者や料理人、大工など、色々な人が参加します。関心がある人は、得意とくいなことをのばすと行けるかもしれませんよ。
※南極地域を平和目的で利用することや、領土権りょうどけん主張しゅちょうしない ことなどの約束。日本、アメリカ、イギリス、フランスなど12ヵ国の間で1959年に決められ、61年に発効はっこうされた。2019年12月時点で締約ていやく国は54。
プロフィール
1993年朝日新聞社入社。2003年11月~05年3月の第45次南極観測越冬隊、09年11月~10年3月の第51次夏隊セールロンダーネ山地地学調査隊ちょうさたい、19年11月~21年2月の61次南極観測越冬隊に同行取材。北極でもパタゴニアやヒマラヤの氷河ひょうがなどを取材している。