サステナブルなお仕事No.9

航空会社
環境かんきょうマネジメントスタッフ

松原まつばら麻莉子まりこさん


航空会社
環境かんきょうマネジメントスタッフ

松原まつばら麻莉子まりこさん

飛行機の旅を
『サステナブル』に
カギは〝国産SAF〟
地球温暖おんだん化の原因となる二酸化炭素。
その排出はいしゅつ量を減らすのは、待ったなしの課題。
空を飛ぶのに燃料をたくさん使う飛行機も
努力しているよ。
松原さんはその担当部門のスタッフ。
大きなカギになるのが、
今までの燃料にかわる「SAFサフ」なんだって。

※Sustainable Aviation Fuel
(サステナブル・アビエーション・フュエル)
:持続可能な航空燃料

Q1.
どんなお仕事クエッ?
環境にできるだけ負担ふたんをかけず飛行機を飛ばすにはどうすればいいかを考えています。
いろいろな取り組みの中でも力を入れているのが、SAFとよばれる代替だいたい航空燃料の活用です。「SAF」や「代替航空燃料」というと難しく聞こえますが、「今までの燃料にかわる燃料」と思っていただければ大丈夫です。SAFはゴミなどを原料に作られる、地球にやさしい燃料。石油が原料の通常のジェット燃料に比べ、二酸化炭素の排出を約80%減らすことができます。今使っているのはほんの一部ですが、2030年までに全燃料の10%をSAFにすることをめざしています。

普及ふきゅうには、生産量を増やしてねだんを低くすることが 必要なので、SAFの生産体制作りも進めています。2021年2月には、古着25万着の綿から作った、日本初の国産SAFを使ったフライトを行いました。わたしたちJALグループの航空会社は、飛行機の燃料の約70%を日本で給油します。燃料を輸入すると、海外から運ぶ時にエネルギーを使い、そこで二酸化炭素がたくさん出てしまうので、国内で作ることも大切です。
目標は2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロにすること。ほかの航空会社とも協力し合い、航空業界全体で目標を達成するために取り組んでいます。
使用ずみ衣料から国産バイオジェット燃料を作るプロジェクト
使用ずみ衣料から
国産SAFを作る
プロジェクトには、
目標の10万着を大きく上回る
25万着が集まった。
写真提供:日本航空
航空会社は、二酸化炭素の排出が少ない燃料の開発に取り組んでいる。
航空会社は、二酸化炭素の排出が少ない
燃料の開発に取り組んでいる。 写真提供:日本航空
Q2.
なぜ、そのお仕事を選んだクエッ?
大学生のころ、社会に貢献こうけんできる仕事をしたいと思っていました。航空会社を考えたのは、留学したアメリカから帰る時です。飛行機のとなりの席に、国をこえた開発協力に取り組む機関の人が座っていました。そのような重要な使命を持つ人、わたしのように家族の元へ帰る人など、多くの方々の命や大切なものをあずかりながら飛行機は飛んでいるのだと実感し、その安全を支えたいと思いました。

会社に入るとまず、「地上のパイロット」ともいわれる運航管理の仕事をしました。地上で気象などの情報を集めて燃料の量や経路を決め、飛行機にいるパイロットをサポートするのが役目でした。
その仕事の中で特に印象深かったのは、新型コロナウイルスの感染かんせんが広がり国際線が飛べない中で、インドから帰れない日本人のために特別便を出すことになり、その運航準備に関わった時のこと。社会が混乱する中でも必要とされる飛行機を飛ばすには、しっかりとした基盤きばんを持つ、持続可能な航空会社でなければならないと強く感じたのです。そこからサステナブルへの取り組みに関心を持ち、今の仕事を希望しました。
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
今までで一番の感動は、インドからの特別便のことです。南インドの空港から成田空港まで、運んだのは、仕事でインドにいた人やその家族ら約200名。帰れなかった時はきっと心細かったと思います。成田に着いた時に機内で拍手はくしゅが起こったと聞き、むねが熱くなりました。

飛行機の運航には予測できないことがたくさんあり、スピード感を持って正確な判断をしなければならないので、その対応に苦労しました。また、環境のことだけ考えればいいわけではなく、安全に飛行機を運航することが大前提としてあります。燃料を多く積めば長く飛べる分余裕よゆうができて安心ですが、重量が重くなると燃料をたくさん使うことになるので環境にはやさしくない。しかし一方で、例えば天気が悪い時は、条件が良くなるまで上空で着陸を待つことがあります。飛び続けるためには燃料が必要になるので、飛行機に積む燃料を減らし過ぎてしまうと安全が確保できない。バランスをとるのが難しく、経験や感性も求められます。
Q4.
どんな子どもだったクエッ?
大人しい子でしたね。運動は苦手な方で、体を動かしたり外で遊んだりはあまりしませんでした。小さいころからピアノを習っていて、音楽や絵を描(か)くのも好きでした。勉強も好きで、コツコツ努力するタイプでした。
ピアノに加えて中学の部活では打楽器をやっていて、そのころなりたかったのは演奏家えんそうかです。
好きだったおやつはチョコボールで、いろいろなフレーバー(味)を食べるのが楽しみでした。
Q5.
未来の大人たちへ
いろいろな人や物に出会って、ふれて、世界がつながっていることを意識してほしいと思います。毎日当たり前に食べているものも、どこかで作って、運んでいる人がいます。意識するだけで、きっと世界の見え方がちがってきます。

遠くの人や物とも出会わせてくれるのが飛行機ですが、利用し続けるには環境の負担を減らす必要があります。JALグループの航空会社もSAFだけでなくさまざまな取り組みをしています。
例えばパイロットは、燃費がよくなる上昇じょうしょう下降かこうの仕方や、着陸後に地上を移動する時は安全に問題がないなどの条件がそろえば、2つあるエンジンを1つ止めるといったことで、使う燃料の量を減らしています。
飛行機に関わるみんなが環境のことを考えることで、広い世界に羽ばたく可能性をつないでいけます。パイロットになりたい人も、そのことをぜひ知っておいてくださいね。
プロフィール
東京都生まれ。2015年日本航空へ入社。運航管理を経て、事業を通じて持続可能な社会の実現に取り組む部署ぶしょに所属し、環境保全への取り組みを担当する。
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