サステナブルなお仕事No.17

サステナビリティ・プロデューサー

エクベリ聡子さとこさん


サステナビリティ・プロデューサー

エクベリ聡子さとこさん

「バナナペーパー」で

人も森も動物も笑顔に
バナナペーパーってなんだかおいしそう♪と思ったら、通常はゴミになるバナナのくき※を原料にした紙のことで、アフリカの貧困ひんこん環境破壊かんきょうはかいの解決に役立っているんだって。アフリカ南部のザンビアと日本、国境をこえたチームでその輪を世界に広げているよ。

※葉が何まいも重なって丸まり、幹のように見える、偽茎ぎけい仮茎かけいとよばれる部分のこと。
Q1.
どんなお仕事クエッ?
サステナビリティという考え方を、具体的なカタチにするための活動を行っています。なかでも、有機栽培さいばい※のバナナの茎を使ったバナナペーパー「ワンプラネット・ペーパー」の生産に力を注いでいます。

バナナは木ではなく草だって知っていますか? バナナは木の幹や枝に果実をつけるのではなく、草の茎に果実がつくのです。そして、同じ茎に果実は1度しかつかず、収穫しゅうかく後は新しい茎に栄養がいくように古い茎は切られ、通常は川にすてたり燃やしたりしてしまうんですよ。

アフリカのザンビアでも毎年、古い茎が大量のゴミになっています。なんとかできないかと思ったわたしは、ザンビアの小さな村に、茎を集めて繊維せんいを取り出す工場をつくりました。そして、この繊維を日本の和紙工場に運び、古紙などを加えて紙にしています。その紙は、名刺めいしや紙ぶくろ、ノートやカレンダーといった製品となり、日本だけでなく世界で使われています。


※農薬や化学肥料を使わず、自然界の力を生かした生産方法。
バナナの果実は茎につく。茎には一回しか果実はつかない。 PHOTO: One Planet Café
バナナの果実は茎につく。茎には一回しか果実はつかない。 PHOTO: One Planet Café
バナナペーパーは、福井の越前(えちぜん)和紙の技術を応用してつくられる。風合いのある上質な紙だ。 PHOTO: One Planet Café
バナナペーパーは、福井の越前えちぜん和紙の技術を応用してつくられる。風合いのある上質な紙だ。 PHOTO: One Planet Café
Q2.
なぜ、そのお仕事を選んだクエッ?
環境問題の解決に関わる会社で働いていたころ、お休みに野生動物を見ようとアフリカのザンビアへ行きました。野生動物の世界に感動した一方、そこで知ったのはザンビアにらす人々の深刻しんこくな貧困問題。貧しさから子どもたちは学校に行けず、お母さんやお父さんは現金収入しゅうにゅうを得るために違法いほうな森林伐採ばっさいや野生動物の密猟みつりょうをしてしまう、そんな状況だったのです。

森や動物を守るためにも貧困を解決しないといけない。いい方法がないかとさがしていた中で行き着いたのがバナナペーパーでした。ザンビアに工場を作ることで仕事が生まれ、貧困問題を改善かいぜんできます。さらに、ゴミを減らすことは二酸化炭素の排出はいしゅつ量を減らすことにもつながります。人も環境かんきょうも守ることができる紙。それがバナナペーパーなのです。

最近はザンビアでも少しずつ紙を作っており、その量を増やして、ザンビアの人たちの仕事と収入を増やしたいと考えています。
ザンビアの工場では25人が働いており、その家族ら約250人の生活を支えている。 PHOTO: One Planet Café
ザンビアの工場では25人が働いており、その家族ら約250人の生活を支えている。 PHOTO: One Planet Café
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
ザンビアの村では、わたしたちの前にもいくつかの国際団体などがプロジェクトを始めるものの、すぐに中断していたので、どうせ続かないだろうと思われ、信頼しんらい関係を築くのに苦労しました。信頼と協力、仲間を得るのに4~5年かかりましたね。

でも、そんな苦労に対し、感動は10倍あります。
最近でうれしかったのは、工場で働いているザンビア人の女性が子どもを大学へ進学させたこと。子どもたちによりよい教育を受けさせることは工場のメンバーたちの望みで、それをかなえることができました。ザンビアでは多くの人が満足な教育を受けられておらず、大学進学はまだめずらしいことです。仕事をしてもらうなかで、教育の大切さや可能性を伝えてきて本当によかったと思いました。村をあげてお祝いしました。
Q4.
どんな子どもだったクエッ?
とてもおてんばで、いつも2つ上の兄とその友達にくっついて、虫をつかまえたりして遊んでいました。育ったのが大きな川のそばの自然がいっぱいの所で、川ぞいにあった祖母の畑でもよく遊びました。
お菓子で好きだったのはチョコボール! 特にピーナッツが好きで、今も見つけたらつい手がのびます。

夢は特になかったですね。勉強は、国語は好きだったのですが他はやる気がなく、英語も中1であきらめました。ところが、尊敬そんけいする先輩せんぱいから言われた「〇〇高校に行った方がいいよ」のひと言が転機に。中3の夏からもう勉強し、絶対ムリと言われていた高校に合格。受験勉強の中で英語の楽しさも知り、大学では英文学を学びました。
Q5.
未来の大人たちへ
こうして活動を続けていられるのは、多くの仲間と共通の目標を持てていることが大きいと思います。
わたしたちには今、2030年までの達成を目指すSDGs という共通の目標があります。SDGsは大人の宿題だと考えますが、子どものみなさんにも一緒いっしょに取り組んでもらうことで早く目標に近づけます。そこにえがかれている素晴らしい世界をがんばって実現し、みなさんにバトンタッチしていくので、どうか応援おうえんしてください。
プロフィール
佐賀県生まれ。大学卒業後、政府派遣はけんの日本語教師としてアメリカの高校で勤務きんむ。帰国後、商社を経て環境コンサルティング会社に入社。スウェーデン人で環境ジャーナリストである夫のペオさんと2011年バナナペーパープロジェクトを開始。2012年に設立した会社「ワンプラネット・カフェ」の社長を務める。
backbackpagetop