青森のリンゴのしぼりかすで作る
サステナブルな「ヴィーガンレザー」
ヴィーガンレザーって知ってる? 動物の皮を使わず、植物を原料にレザー(革)の風合いを出した生地のことで、サステナブルな素材として注目されているよ。藤巻さんは、ふるさと青森のリンゴの「もったいない」にヒントを得て、作り始めたんだって。
青森県産のリンゴから作られるおいしいリンゴジュース。このジュースを作る時にどうしても出てしまうのが、果汁以外のしぼりかすです。しぼりかすは、ジャムにするなど再利用もされていますが、量が多いため燃やして処理しなければならず、地域の課題のひとつになっています。
しぼりかすをうまく使えないか。ぼくらはそう考え、ヴィーガンレザーを作っています。ジュース工場などから集めたしぼりかすを乾燥させて粉にし、他の材料と混ぜて生地にしていくのですが、でき上がりは、軽くてやわらかくてじょうぶ。色も自由につけられ、絵や写真などの印刷もできます。すでに飛行機の座席上部のカバーに採用されるなど、使ってもらえるところが増えています。
植物を使うヴィーガンレザーは動物にも地球環境にもやさしく、サボテンやキノコなど、さまざまな植物を使って作られています。ただ、そのために植物を栽培していることが多いのが現状です。ぼくらが作るものは、すてられる食品をアップサイクル※することで、地域の課題を解決しているのが特徴です。
※すてられるはずのものに新しい価値をつけて再生すること
リンゴのしぼりかすを細かい粉にし、生地に配合する。乾燥にはできるだけ二酸化炭素を出さない技術を使用。大学の協力も得て、より環境にやさしい生産の研究も行っている。青森県でジュースなどの加工で出るリンゴのしぼりかすは年間約2万トンといわれ、燃やして処理する分をへらすことでも二酸化炭素の排出量をへらせる。
商品名は「RINGO―TEX(リンゴ・テックス)」。社名の「appcycle(アップサイクル)」は、リンゴの「apple(アップル)」と新たな価値をつけた再生を意味する「upcycle(アップサイクル)」をかけたもの。
全日空の特別機のヘッドレストカバー(シートの背もたれの頭を置く部分にかけるカバー)に採用されたほか、青森出身のタレントが手がけるアパレルブランドにも使われている。ゆくゆくはオリジナルの製品も作る予定。
青森で生まれ育ち、東京で美容師になり、その後は医療に関する仕事をしていましたが、ふるさとのために何かしたいという想いがずっとありました。
そんな中、ヴィーガンレザーの原料にリンゴが使われていることを知りました。リンゴといえば、青森は生産量日本一です。日本にあるすぐれた技術を組み合わせて、高品質なものを作ることができれば、世界にも通用する商品になると考え、青森で会社を立ち上げました。
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
医療の世界から、レザーというまったく知らない世界へ飛びこんだので、つながりを作るのに苦労しました。特に大変だったのは、加工と生地にしてくれる工場を見つけること。百件以上電話をかけ、会いに行っては断られることをくり返しましたが、色々な人の助けがあって、協力してくれる工場と出会うことができました。
一方で、商品の売りこみは全然していません。新聞などで取り上げてもらったことから口コミで広がり、飛行機の座席のカバーの話もとんとん拍子で進んでいきました。カバーを納品したのは会社を始めてたった4カ月の時。その飛行機が飛んだ瞬間は、感動で思わずなみだぐみました。
今とはちがって何も長続きしない子で、野球、サッカー、卓球と、色々やっては投げ出していました。かろうじてバスケットボールは小学校から中学まで続きましたね。
体を動かすのが好き、というよりじっとしていられなくて、遊ぶのも外ばかり。山も川もある青森の自然の中でのびのび過ごしました。
チョコボールが大好きで、金のエンゼルは出なかったけど、銀のエンゼルを集めておもちゃのカンヅメをもらったこともあります。
みなさんの可能性は無限大。やりたいことをあきらめないでください。人のつながりを大切にして、まずあいさつをしっかりしてください。そうすれば、こまった時もきっと助けてもらえます。
また、目の前の小さな積み重ねが、地球の未来をよりよくするための大きな力になります。使うものや買うものを選ぶことも大事。その選択肢のひとつとしてヴィーガンレザーにも目を向けてもらえればうれしいです。
プロフィール
青森県青森市生まれ。美容専門学校を卒業後、東京で美容師として活躍。
医療関係の仕事を経て2022年、青森リンゴのヴィーガンレザーを手がける会社「アップサイクル」を起業した。
現在は東京と青森を行き来する生活。
住む場所を問わない自由な働き方も推進している。