サステナブルなお仕事No.41

山翠舎さんすいしゃ代表

山上やまかみ浩明ひろあきさん

山翠舎さんすいしゃ代表

山上やまかみ浩明ひろあきさん

木の歴史れきしや家の物語を未来につな
今、日本では住む人がいなくなった空き家がふえて、問題になっているんだ。とても良い木を使った家がゴミになっちゃうことも多いんだって。そこで山上さんは、家とその木材のアップサイクル実践じっせん
キーワードは「古民家」「古木こぼく」だよ。

てられるはずのものに新しい価値かちをつけて再生さいせいすること
Q1.
どんなお仕事クエッ?
だれも住む人がいなくなり、こわされてしまう空き家の「古民家」、同じく捨てられてしまう「古木」の新しい使い道を考え、再利用しています。私たちが「古木」とよんでいる木材は、80年以上も前に建てられた古民家に使われていた柱やはりや板などです。日本には良質りょうしつな木材を使った古民家がたくさん残っています。それぞれの家に歴史があり、そこに住んでいた人たちの物語があります。古木は単に「古い木」というわけではなく、その家の歴史や物語がつまっている財産ざいさんなのです。

古木は、木の種類や家のどの部分に使われていたかによって、形や色もさまざまで、一つ一つに個性こせいがあり、同じものは二つとありません。私の会社では、空き家となった古民家から、古木をていねいに取り出し、お店や商業施設しせつ内装ないそうに再利用しています。これまで手がけたお店は、レストランやショップなど500店以上です。また最近では、古民家を解体かいたいせず、建物そのものをふたたび使えるように修理して、活用するという事業にも力を入れています。古民家や古木の魅力みりょくを伝え、貴重きちょう資源しげんとして循環じゅんかんさせていきたいと考えています。
山上さんが社長をつとめる長野県長野市の建築(けんちく)会社「山翠舎」。古木を活用し、人気スポーツ用品店や有名カフェ店の内装も手がけている。
山上さんが社長をつとめる長野県長野市の建築けんちく会社「山翠舎」。古木を活用し、人気スポーツ用品店や有名カフェ店の内装も手がけている。
Q2.
なぜ、そのお仕事を選んだクエッ?
山翠舎は私の祖父そふが1930年に創業そうぎょうした木工所がはじまりです。その後、父が2代目を引きつぎ、住宅じゅうたくや商業施設しせつを手がける建設けんせつ会社となりました。私は家の仕事をつぐと決めていたわけではなく、大学では関心のあった環境かんきょう経営けいえい工学を学び、卒業後はIT企業アイティーきぎょうに入社しました。大きな会社でやりがいも感じていましたが、「一人ひとりのお客さんとしっかり向き合って仕事がしたい」という気持ちが少しずつ大きくなりました。そんな時、ふと見わたせば、実家の山翠舎が、まさにそのような会社だということに気がつきました。小さいころからかわいがってくれた職人しょくにんさんたちと、一緒いっしょに仕事がしたいという思いも重なり、今の仕事にくことにしました。

※木材を使って家具や木工製品せいひんを作る会社
※Information Technologyのりゃく。コンピューターやインターネットを使うためのいろいろな技術ぎじゅつのこと。情報じょうほう技術。


山翠舎に入社してすぐに、古民家があっけなくこわされ、良い木材がゴミになるのを目の当たりにして、なんてもったいない!と思ったことがきっかけで、古木に目を向けるようになりました。おさない頃から木にかこまれて育ったことも、アイデアの原点になったと思います。当時の社長だった父も賛成さんせいしてくれて、古木を活用する新たな事業を立ち上げました。
山翠舎の倉庫にある古木は約5000本。1本1本に年代や古民家のどの部分に使われていた木材かなどが細かく記録されている。
山翠舎の倉庫にある古木は約5000本。1本1本に年代や古民家のどの部分に使われていた木材かなどが細かく記録されている。
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
古木は一つ一つに個性があり、形や重さ、材質ざいしつちがいます。古木をあつかうには、知識ちしきを持った職人さんたちの手作業が欠かせません。古木はかたく、形も一本一本で違うので、まず加工に手間がかかります。お店の内装も一けんごとに完成形は違うので、作るのも大変です。せっかく興味きょうみを持っていただいても、一度にたくさんの注文を受けられないのがなやましいところです。

じっくり手をかけ、古木や古民家が新しいお店や建物として生まれ変わった時は感動します。お客さんからの、「期待以上にすばらしい」という言葉を聞きたくてがんばっています。私たちが作ったお店は長く続いていることが多く、それもうれしいことです。
増加(ぞうか)する空き家の現状(げんじょう)や古民家・古木の良さについて、子どもたちに知ってもらおうと、「キッザニア東京」の「未来を変える!アクションラリー」スポンサーとして“持続可能(かのう)なまちづくり”に関する実例を展示(てんじ)中(2024年2月時点)。
増加ぞうかする空き家の現状げんじょうや古民家・古木の良さについて、子どもたちに知ってもらおうと、「キッザニア東京」の「未来を変える!アクションラリー」スポンサーとして“持続可能かのうなまちづくり”に関する実例を展示てんじ中(2024年2月時点)。
Q4.
どんな子どもだったクエッ?
小学生の時のゆめは発明家。私が住んでいた自宅じたくの前が会社の作業場で、そこにいっぱいある木材や部品、廃棄はいき物で何を作ろうかと考え、組み立てていくのが好きでした。うらには竹やぶがあって竹とんぼや竹鉄砲でっぽうをよく作りました。

手先が器用だったので、学校の工作も得意とくいでした。算数や数学も得意で、高校生の時に学校で1位になったこともあります。苦手だったのは……国語です。また、科学雑誌ざっしを読んで、森林伐採ばっさいや海に流れ出る油などによる環境破壊はかいに心をいためていました。環境やもの作りへの関心はそのころに芽生えていたんですね。おかしはあまり食べなかったのですが、今はチョコモナカジャンボが大好きです。
Q5.
未来の大人たちへ
今、気になったり感じたりすることが、将来しょうらい、仕事になるかもしれません。経験けいけんしたことは必ずいきてくるので、多くのことにチャレンジして、どんなことでもいいので「感じること」を大切にしてほしいです。失敗してもプラスにする方に考えていくと良いと思います。よりよい未来を作っていってください。
プロフィール
1977年長野県長野市生まれ。東京理科大学理工学部を卒業後、大手通信会社に入社。2004年に家業である「山翠舎」へ入社し、2006年に古木を活用する事業を立ち上げた。2012年に3代目社長に就任しゅうにん。21年に事業構想こうそう大学院大学を卒業。次々に新事業をスタートさせている。
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