サステナブルなお仕事No.43

DG TAKANO代表

高野たかの雅彰まさあきさん

DG TAKANO代表

高野たかの雅彰まさあきさん

超節水ちょうせっすい〟を実現じつげん
水不足の解決かいけついど
家でも学校でも、いつでも水が使えること。実は当たり前じゃないって考えたことはあるかな? 世界の国々では、水不足が深刻しんこくな問題になっているんだ。そこで高野さんが作ったのは、毎日の生活で使う水の量をへらせるすごいもの!
Q1.
どんなお仕事クエッ?
ちょっとの水で食器をあらうことができる「節水」製品せいひんを開発しています。一つは、水道の蛇口じゃぐちの先に取りつけると、水の使用量を最大で95%もへらせるノズル※1です。水をマシンガンのように玉の形にして飛ばすことで、水の量をへらしても洗う力が落ちません。主にレストランやスーパーマーケットなど、水をたくさん使うお店や会社で活用されています。

※1 えき体や気体を吹き出させたり、出かたを調節したりするための部品

もう一つは、水ですすぐだけでよごれが落ちるお皿。見た目はふつうのお皿ですが、表面に特殊とくしゅな加工を行い、あげ物やお肉料理を食べた後の汚れも軽くすすぐだけで落とすことができます。洗剤せんざいを使わなくても、水だけでお皿がきれいになるので、節水になることはもちろん、かんきょうへの負荷ふかを小さくし、お皿を洗う家事の負担ふたんもへらせます。

日本にいると実感しにくいのですが、水不足はとても大きな問題です。生活に必要な水が足りない国がたくさんあります。人口増加ぞうかや気候の問題などにより、国連児童基金こくれんじどうききん(ユニセフ)によると※22040年までに世界の水不足はさらにひどくなると予測よそくされています。水は飲み水やお風呂だけではなく、農業やちく産業※3でも多くの水が必要です。水不足は食べ物をはじめ、生活の色々な問題につながっています。私は毎日の生活で使う水をへらすことから、世界の水不足を解決していきたいと思っています。

※2 https://www.unicef.or.jp/news/2021/0066.html
※3 牛、ぶた、にわとりなどをい、肉や卵、牛乳などを生産する産業
水道の蛇口に取り付けるだけで、通常(つうじょう)のノズルとくらべて最大で95%も節水できる節水ノズル「Bubble(バブル)90」。
水道の蛇口に取り付けるだけで、通常つうじょうのノズルとくらべて最大で95%も節水できる節水ノズル「Bubble(バブル)90」。
蛇口から出てくる水を玉の形にして、マシンガンのように汚れに打ち付けて洗い落とす。たくさんのレストランやスーパーで活用され、年間2600万トン以上の節水を実現。サウジアラビアなど海外からも注目を集めている。
蛇口から出てくる水を玉の形にして、マシンガンのように汚れに打ち付けて洗い落とす。たくさんのレストランやスーパーで活用され、年間2600万トン以上の節水を実現。サウジアラビアなど海外からも注目を集めている。
水ですすぐだけで汚れが落ちる食器「meliordesign(メリオールデザイン)」は、少ない水で洗え、洗剤も不要。家事の時間を短くし、洗い物による手あれなどの負担も小さくできるという。
水ですすぐだけで汚れが落ちる食器「meliordesign(メリオールデザイン)」は、少ない水で洗え、洗剤も不要。家事の時間を短くし、洗い物による手あれなどの負担も小さくできるという。
Q2.
なぜ、そのお仕事を選んだクエッ?
町工場の3代目として生まれました。時代の流れの中で、すごい技術ぎじゅつを持つ工場でも会社がなくなってしまったり、経営けいえいがうまくいかなくなってしまったりするのを見て、家業をつごうとは思いませんでした。でも、ほかに働きたい会社もなく、それなら自分で会社を作ってみようと思いました。どんな会社を作るか考えたとき、だれかのマネじゃないことをしたい、そして世界を飛び回りたい、こまっている人を助けたいと考えました。そして、世界の人々が何に困っているかを調べる中で、注目したのが水不足です。

私の実家の工場は、金属きんぞくをけずってガス機器の部品を作っていました。そのため金属ならどんな形にでもできる機械や技術がありました。水を作ることはできないけれど、その技術を使って節水の製品を作ることはできるのではないかと考えました。他の会社では作れない製品を開発すれば、世界で一番になれるのではないかと思って取り組みました。
水不足の解決に取り組む会社「DG TAKANO」の高野雅彰さん。
水不足の解決に取り組む会社「DG TAKANO」の高野雅彰さん。
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
一番の苦労は最初、協力してくれる人がいなかったことです。まわりの人からは「そんな夢みたいなこと、できるわけがない」と言われて。結局は1人で会社を立ち上げ、工場に1年間こもって完成させた節水ノズルが、日本の産業や社会の発展はってんに役立つ部品を表彰ひょうしょうする「“超”モノづくり部品大しょう」でグランプリに選ばれました。会社を作って1年目、社員は私だけ、素人しろうとが初めて作った製品が日本一になったと、新聞にものりました。それから少しずつ製品がみとめられるようになり、今では多くの人が協力してくれて、すごく助けられています。

感動したことは、つい最近ありました。2024年1月の能登半島地震のとはんとうじしんで、断水だんすいが続く被災ひさい地に、うちのお皿を買って送ってくれた人がいて、それを使った人が「ペットボトル1センチ分の水で洗えるすごいお皿!」とSNSにアップしてくれました。自分の知らないところで、作ったものが困っている人の手に渡り、受け取った人が感げきしてくれている。このことに、びっくりしましたし、うれしかったですね。
Q4.
どんな子どもだったクエッ?
小さいころはよくブロックで遊んでいました。小学生の時はマンガが好きで、駄菓子だがし屋さんに通う、ふつうの子でしたよ。お菓子は「小枝」が好きでよく食べていました。将来しょうらいなりたかったのは、アニメを作る人や映画監督えいがかんとく。人を感動させたいという思いがあって、それは今も変わりません。

小学校では勉強しなくてもどの科目も100点を取っていましたが、漢字を書くのは苦手でした。中学からは数学と物理が得意とくいで、英語が苦手。今も英語は苦手ですが、世界を飛び回っています。
Q5.
未来の大人たちへ
どんどん海外に行って、世界を見てください。広い世界を見て、色々な人に会うことで自分の世界が広がり、外に出ると日本のこともよく見えてきます。また、みんなが大人になるころは社会が変わっているはずです。値段ねだんの安さや便利さだけではなく、これからは、どれだけ地球にやさしいか、生物や環境かんきょうに悪いことはないかということが大切になるでしょう。みんなが社会の中心になる時代まで、できるだけ地球をこわさないようにして、バトンタッチしたいと思います。
プロフィール
1978年大阪府東大阪市生まれ。神戸大学経済けいざい学部を卒業後、IT企業きぎょうを経て起業。2009年に節水ノズル「バブル90」を開発し、2010年にDG TAKANOを設立。2023年にすすぐだけで汚れが落ちる食器「メリオールデザイン」を発表した。
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