サステナブルなお仕事No.45

西田商運代表/バイオ燃料ねんりょう開発者

西田にしだ眞壽美ますみさん

西田商運代表/バイオ燃料ねんりょう開発者

西田にしだ眞壽美ますみさん

ラーメンのスープで
トラックを走らせる
福岡県の名物、とんこつラーメン。そのスープでトラックを走らせるまさかの方法を発明したんだ。
残っててられるラーメンのスープを、トラック用のバイオディーゼル燃料※1さい利用。
知識ちしきゼロから燃料の開発を成功させ、「福岡のエジソン」とばれているよ。

※1 動植物からつくる自動車用の燃料。二酸化炭素にさんかたんそ排出はいしゅつらし、地球温暖化ちきゅうおんだんか防止ぼうしに役立つとされている。
Q1.
どんなお仕事クエッ?
トラックで物を運ぶ運送業です。私の会社の大きな特徴とくちょうは、レストランやラーメン店から、天ぷらに使った食用の油やラーメンの残ったスープを回収かいしゅうし、自分の会社でバイオディーゼル燃料に生まれ変わらせ、トラック用の燃料として再利用していることです。

ただ、天ぷら油もスープもそのままでは燃料にはなりません。とんこつラーメンのスープを再利用するために「とんこつカット君」という装置そうちを開発し、福岡県内のたくさんのラーメン店に置いてもらっています。この装置に残ったスープを流しむと、自動的に水と油に分かれるので、油だけを回収し、この油に薬品をぜてバイオディーゼル燃料を作ります。

ラーメン店にとって、残ったスープの廃棄はいきなやみの種でした。スープの油を再利用することで、お店のゴミを減らし、排水管はいすいかんのよごれや、くさいにおいも少なくすることができます。私の会社にとってもガソリンや軽油※2の代わりにバイオディーゼル燃料を使えば、地球温暖化の原因げんいんになる二酸化炭素を減らすことにつながります。自分たちにできることで温暖化を食い止め、地球環境かんきょうを守り、未来につないでいきたいという思いで、この取り組みを進めています。

※2 石油製品せいひんの一種。トラックやバスを走らせる燃料に使われる。
西田さんが開発した「とんこつカット君」は大手チェーンをはじめ多くのラーメン店に設置(せっち)されている。今は福岡県内が中心だが、全国に広げることも計画中。
西田さんが開発した「とんこつカット君」は大手チェーンをはじめ多くのラーメン店に設置せっちされている。今は福岡県内が中心だが、全国に広げることも計画中。
廃棄される食用の油からバイオディーゼル燃料を作り出す西田商運のタンク。原料となる油はラーメン店やレストランなどから回収し、多い時で1日約3,000リットルのバイオディーゼル燃料を製造(せいぞう)している。
廃棄される食用の油からバイオディーゼル燃料を作り出す西田商運のタンク。原料となる油はラーメン店やレストランなどから回収し、多い時で1日約3,000リットルのバイオディーゼル燃料を製造せいぞうしている。
バイオディーゼル燃料で走る西田商運のトラック。乗りごこちは軽油と変わらないという。
バイオディーゼル燃料で走る西田商運のトラック。乗りごこちは軽油と変わらないという。
Q2.
なぜ、そのお仕事を選んだクエッ?
運送業をやろうと決めたのは小学4年生でした。自宅じたくうらにあった車の整備せいび工場によく手伝いに行っていて、エンジンや車が好きだったので、将来しょうらいは車を使う仕事をしたいと思っていました。20さいの時、トラック1台で運送会社を設立せつりつし、少しずつ会社を大きくすることができました。

バイオディーゼル燃料の開発は、今から約20年前に始めました。トウモロコシやサトウキビなどの植物からバイオディーゼル燃料が作られ、それが「緑の油田ゆでん」と表現ひょうげんされていることを知ったのがきっかけです。トラックは燃料がなければ動きません。だからこそ、植物から燃料をつくる「緑の油田」のように、地球環境を考えた燃料づくりを僕もやらなきゃいかんと思いました。最初は天ぷら油で研究を始め、5年ほど実験を重ねてバイオディーゼル燃料を開発しました。その後、知り合いのラーメン屋さんから「残ったスープを活用できないか」と相談され、とんこつスープをバイオディーゼル燃料に再生させる方法を考えました。
豚(ぶた)の骨(ほね)でスープをとる豚骨(とんこつ)ラーメン。このスープに含(ふく)まれる豚の脂(あぶら)がバイオディーゼル燃料の原料になる。
ぶたほねでスープをとる豚骨とんこつラーメン。このスープにふくまれる豚のあぶらがバイオディーゼル燃料の原料になる。
完成直前のバイオディーゼル燃料。ここからさらに不純物(ふじゅんぶつ)を取りのぞき、最後はほぼ無色になる。
完成直前のバイオディーゼル燃料。ここからさらに不純物ふじゅんぶつを取りのぞき、最後はほぼ無色になる。
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
20歳で会社をつくりましたが、当時はご飯を食べるお金も足りず、よく母が焼いたイモを持たせてくれました。体調をくずした時も、自分の代わりがいないからがんばるしかありませんでした。くじけずにがんばった結果、会社を成長させることができました。バイオディーゼル燃料の開発でも、最初は「そんなのは無理だ」「できるわけがない」と言われました。でも、必ず未来のためになると思って続けてきました。それが今、みんなに必要とされるようになってきて、SDGsの先がけとしてテレビで紹介しょうかいされることもえました。うれしいことです。
Q4.
どんな子どもだったクエッ?
車が大好きで、学校から帰ると整備工場に通っていました。魚つりにも夢中むちゅうになり、工場の社長さんが連れていってくれたり、友だちや兄弟と行ったりしました。7人兄弟の4番目で、自宅には犬や鳥など動物もたくさんいて、家の中はいつもにぎやかでした。お菓子かしは森永ミルクキャラメルが好きでしたね。
Q5.
未来の大人たちへ
好きなこと、やりたいことを一生懸命けんめいやってください。失敗するのは途中とちゅうでやめるからで、あきらめずに続けた先に成功があります。しっかり計画を立てることも必要です。未来のために大切なのは、思いやり。それが世界をよくしていくと思います。
プロフィール
中学卒業後、オート三輪※3の運転手として働き始め、1968年、20歳の時に運送会社を設立。「西田商運」を年商30億円の会社に育て上げる。2007年からバイオディーゼル燃料の開発をスタート。2013年に「とんこつカット君」を発明した。

※3 1930~50年ごろに多く使われていた三輪のトラック。
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