不思議生物「ミドリムシ」と
使用済みの
食用油で次世代の燃料をつくる
地球温暖化の原因になる
二酸化炭素を出す、石油などの化石燃料。
それに代わるものとして期待されている
のが、生物を原料にするバイオ燃料だよ。
使うのは、え?ミドリムシ!?
てんぷらを揚げた後などの使い終わった食用油と、「ミドリムシ」 からバイオ燃料を作り、社会に広めています。そのバイオ燃料を使った車やバス、船は2020年にすでに走り出し、飛行機は2021年6月に初めて飛びました。
水の中にいるミドリムシは昆布と同じ藻の一種で、体長約0.05mmととても小さいですが、5億年以上前から地球にいる人類の大先輩。光合成※をして自分で養分を作り成長する植物の性質と、鞭毛※を動かして光のある方に向かって泳ぐ動物の性質をあわせ持つ、不思議な生き物です。
ミドリムシは体内に油を作ってためるので、私たちはこれを取り出して原料にしています。また、捨てられてしまう使用済みの食用油も回収して原料としています。バイオ燃料も燃える時に二酸化炭素が出ますが、原料となるミドリムシや使用済み食用油の原材料である植物も光合成により二酸化炭素を吸収するので、プラスマイナスゼロと考えられます。ミドリムシは他の植物とちがって栄養豊富な土地での栽培は必要ありません。栽培する為に森林をこわす必要がない、かんたんに増やせるといった特長もあります。
※光合成:日光のエネルギーを利用して、水と二酸化炭素からデンプンなどの養分と酸素を作る働き。
※鞭毛:細胞の表面にある毛のような細長い器官。動くために使います。
ずっと物を作ったり売ったりして、利益を上げるためにがんばってきましたが、利益の為に必要以上にものを作ったり、売れ残ったものを捨ててしまったりすることに、次第に違和感を持ち始めました。
とくに、自分の子どもが生まれてからは、地球にやさしくて、広めれば広めるほど世の中のためになるものに関わりたいと思うようになりました。人間が仕事をするのは世界がよりよくなるためのはず。この仕事はまさにそうだと考えました。
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
ミドリムシの油はドロっとしているので、工場のパイプが詰まってしまうなど、うまくいかないことは多く、世界で初めて作るので想定外の苦労はたくさんありました。その分、燃料が完成した時は「本当にできたんだ!」と思って感動しました。
そして、2021年6月には、初めて私たちが作った燃料で飛行機が飛びました。会社として10年以上思い描いてきた夢がようやく叶った瞬間です。周りからずっと「そんなことできるの?」と疑われてきたので、それがようやく晴れた思いがしましたし、大きな誇りと自信を持つことができました。今まで仕事してきた中で味わった事のない達成感でした。
活発で、スポーツも勉強も得意な小学生でしたよ。でもちょっとはずかしがり屋で、人前でしゃべるのは得意ではありませんでした。
ぼくは日本で生まれ育っていますが、祖父母は中国から日本に渡ってきた人たちなので、中華学校に通っていました。きびしいけれど楽しい所で、先生がよく山登りやキャンプに連れていってくれ、そんな先生になりたいとあこがれていました。
住んでいた神戸は山も海も川も近く、ふだんから自然の中でも遊んでいました。お菓子はチョコボールを、おもちゃのカンヅメもほしくて、よく食べていました。それとよく覚えているのが、大人になってから友だちと勢いで富士山に登ったときのこと。とちゅうでばててしまったのですが、たまたま持っていたのがハイチュウ。糖分を補給できたおかげで助かりました。
今の行動は、未来につながっています。自分に何ができるかを、楽しみながら考えてみてください。例えば、横浜市のある小学校の生徒たちは、家の使用ずみの食用油を集めるのに協力してくれています。それはバイオ燃料の一部になります。ふつうだったら、ご飯の後にごみになるはずのものなのに、バスや飛行機の燃料になるなんて、面白くないですか?
楽しくて世の中のためになる、助け合いになる行動で、いつか生まれてくる自分たちの子どもの世代にも、豊かなくらしをつないでいってください。
プロフィール
大学卒業後、総合商社で化学品の貿易や自動車販売の事業開発などを経験。
その後、スポーツメーカーで商品を届ける仕組みの改革などを行った。2017年、ミドリムシを活用して食品や化粧品などの多様な商品を製造・販売するユーグレナに入社。
バイオ燃料の事業に取り組む。