GS(グリーン・サイエンス)アライアンス代表
森良平さん
GS(グリーン・サイエンス)アライアンス代表
森良平さん
植物が原料のプラスチック!?
地球にやさしい材料を開発
水に強く、軽くて便利なプラスチック。主な原料は石油で、身のまわりの色々なところで使われているね。ただ、プラスチックは木や紙とちがい、正しく分別されなかったり、ポイ捨てされたりすると、自然の中では分解されず、海や川を汚したり、魚がエサと間違って食べてしまったりといった問題が起きているよ。そこで森さんは、石油の代わりに植物からできた原料で、自然の中で分解できて、土にかえるプラスチックを開発。目標は、あらゆる化学製品を石油ゼロにすること!
環境にやさしい材料を研究開発しています。その代表が、植物由来の原料から作る「生分解性※1バイオマス※2プラスチック」です。このプラスチックの原料は石油ではなく、竹やサトウキビのカスなど捨てられる植物を有効活用しています。また、石油からできたプラスチックが捨てられると、焼却しなければゴミとしてずっと残ってしまいますが、このプラスチックは土や海の中の微生物の働きで、最終的には水と二酸化炭素に分解されます。そのため燃やす必要がなく、プラスチックゴミを出さないという特徴があります。とは言ってもポイ捨てはダメですよ。
私たちの会社では、この「生分解性バイオマスプラスチック」を活用した商品も開発し、スプーンやコップ、イスやテーブルなどの家具も作っています。意外なものではファッションで爪を飾るネイルコスメの商品や、畑で農作物を守るシートも作っています。このシートを使えば農作物を収穫後、畑で自然に分解されるので、ゴミにならず、農家が回収する手間もかかりません。
近年はリサイクルの意識が広がり、プラスチックの再利用も進んでいます。ただ、石油を原料としたプラスチックは、最終的にゴミとして焼却するときに地球温暖化の原因となる二酸化炭素が排出されます。生分解性バイオマスプラスチックは植物からできていて、ゴミになっても自然の中で分解されるので、二酸化炭素の排出量を減らす効果もあります。
※1 微生物の働きによって最終的に水と二酸化炭素に分解されること。
※2 動植物から生まれた、再利用可能な資源。化石燃料に代わる新しいエネルギー源として注目されている。
原料に石油を一切使わず、植物由来の素材から開発したボトル。
実家は80年以上続くインク会社で、私で4代目になります。インクの原料って知っていますか? そう、石油です。石油製品であるインクを作っている会社を父から継ぐとき、せっかくなら環境にいいものを作りたい、誰もやっていないことに挑戦したいと思ってプラスチックに着目しました。プラスチック、インク、ゴムなど、あらゆる化学製品を、石油からではなく植物から作ることを目指しています。
植物から作った素材で開発した塗料。黒、白、赤茶などの色があり、木材やガラス、金属といった様々なものに塗ることができる。
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
植物が原料のプラスチックは、強度が低いという課題があります。使っているうちに曲がってしまったり、壊れてしまったりしては商品にならないので、石油を使わず、いかに強度を保つかということに苦労しています。また、どうしても値段が高くなってしまうので、なかなか買ってもらえないという面もあります。まとめて生産できれば値段を下げられるので、いい方法がないかアイデアを練っているところです。
そんな中でも、少しずつ注文がもらえるようになっていることはうれしいですね。海外からの関心は高く、国連※3でSDGsに貢献する取り組みとして認められ、評価してもらえたことをうれしく思います。開発したものを多くの人に知ってもらえるのもうれしいことです。
※3 正式名称を「国際連合」といい、世界の平和と安全、社会の発展のためにつくられた国際機関。1945年に設立された。
研究開発は、海外の論文を参考にしながら基本的に一人で取り組んできた。アメリカ、スイス、カナダに拠点を持ち、取引先は世界20カ国以上に広がっている。
サッカーが好きで、勉強はきらいでした。理科や算数はまだしも、国語は大の苦手でした。高校生の時に自分で希望してアメリカに留学するなど、チャレンジ精神はありました。勉強がおもしろくなったのは大人になってから。大学院で博士号を取得して研究が楽しくなりました。環境への興味はそれほど強かったわけではないですが、小さいころ、父の釣りについて行き、海や川や池にプラスチックのゴミがたまっているのを汚いなぁと思っていたのは覚えています。また、家の工場の煙突から上がる煙を見て、「環境に悪い」と親に言っていたようです。好きだったお菓子は何といってもチョコボール! 姉の好きだった小枝もいつも家にありました。チョコレートは今も好きです。
地球温暖化をおさえるにはこれまでやってこなかったアクションが必要です。一人の力でできることは限られていますが、がんばって環境にやさしい材料やエネルギー技術の研究を続けていくので、将来、みなさんに広げてもらえればうれしく思います。私の研究や環境にやさしい材料に興味を持ってくれるのは、日本でも海外でも若い人が中心です。自分たちが生きていく世界がこのままではいけないと感じているのでしょう。今の子どもたちが大人になった時には、世の中の多くの人の意識が変わり、そして世界が変わるのではないでしょうか。みなさんの意識と行動で変えていきましょう。
プロフィール
兵庫県生まれ。京都大学大学院で工学博士を取得。就職した会社でヨーロッパに駐在後、祖父が創業した会社、冨士色素に入社し4代目を継ぐ。そのかたわら、2010年に材料やエネルギー技術の研究開発を行うGSアライアンスを設立した。