レンジャー/自然保護官
丸之内 美恵子さん
レンジャー/
自然保護官
丸之内 美恵子さん
自然を守るヒーロー
“パークレンジャー”
本物のレンジャーを発見!
正式な名前は
自然保護官といい、
どうやら悪者をやっつけるのでは
ないらしい。
今は世界
遺産※でもある
屋久島で
活躍しているよ。
※世界のたからとして守っていく文化や自然
日本を代表する自然と風景で、国が指定し、保護・管理する「国立公園」とよぶ場所が、全国に34カ所※あります。その国立公園を中心に、日本の野生動物や植物などの自然を守っています。人間が好きなようにしていたら自然がこわれたり、生き物がいなくなったりするかもしれないからです。
パトロールや、自然のことを知る調査のほか、おとずれた人が自然を楽しみながら歩ける道や、景色を見やすい場所を作ったり、自然のことを学べる教室を開いたりします。国立公園などの自然がある場所が、生き物も人間もみんなが心地よい場所になることをめざしています。
私が受け持つ場所は2~3年ごとに変わります。今いる屋久島は、海にはサンゴやウミガメがいて、標高の低い所にはあたたかい地域の木がしげり、2000メートル近くもある山の上では寒い地域でしか見られない植物も生えています。一つの島の中に、全国の自然の特徴がぎゅっと詰まっていて、ここはまるで小さな日本のよう。
樹齢千年以上の杉もたくさんあって、なかでも縄文杉という樹齢数千年といわれる古い大きな木がとても有名です。
※2021年9月現在
屋久島はアカウミガメの貴重な産卵地
樹齢千年以上の杉がたくさん育っている
子どものころから生き物が大好きで、意味もわからず生き物に関する写真があれば新聞記事を切りぬいて集めるほどでした。その中で小学生の時に開かれた、世界で環境について話し合う「地球サミット」の情報から、自然がこわされ、たくさんの生き物がいなくなっていることを知り、何とかしなければと考えました。それからずっと生き物や自然に関わる仕事をしたいと思っていました。
木や森のことを学んでいた大学3年生の時に、レンジャーという仕事があることを知りました。生き物や自然がくれる感動をつないでいくために、絶対にレンジャーになろう。そんな強い思いをもって試験を受け、夢がかないました。
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
景色や生き物を守るためには、たとえば国立公園の中に住んでいる人に、家の大きさや色の変更をお願いすることもあります。自然が主役の風景をこわさないためや、生き物が住みやすい場所を少しでも残すためです。「自分の家なのになぜ?」と言われることも多く、わかってもらうのは大変なこと。でも、「決まりだから」ですませずに、自然や風景を守るために必要なことだと「自分でそうしよう」と思ってもらえるように、たくさんお話をします。
あるとき、国立公園の中に住む人と山の上から住む街をながめていたら「いい景色だね。前はなぜ自分の家を自由にできないのかと不満だったけれど、今は意味がわかるよ」と言ってもらったことがあります。この人は、私よりも前にいたレンジャーがずっと話をしてきた人で、私のときに、ようやく納得してくれたのです。長い時間がかかりましたが、みんなの思いが通じ合ったんだ、と感動しました。
家の大きさや行動を変えてもらっても、自然も生き物も、人間も、みんなが心地いい場所になるという結果はすぐに出ずに、何十年もかかる場合もあります。でも、今やらなければ、未来は変えられません。そのことを理解し、ともに行動してくれる仲間をつくり続けることが大事だと思っています。
4人兄弟の末っ子で、兄たちにくっついて遊んでいました。近所に田んぼや山、川があり、ザリガニやフナをつかまえたり、セミをとったりし、また、よく海への魚つりや動物園にも連れて行ってもらいました。魚つりでは、魚がつれるよりも朝早い暗い海がこわくて泣いていましたが、夜明けがとてもきれいと知ってから行くのが楽しみになったことがあります。
しょっちゅう「これ何?」「どうして?」と言う知りたがり屋で、「田んぼをつなげたらどうなるかな?」と考えてあぜ道をこわし、ものすごくしかられたことも。興味を持つと試さずにいられなかったのですが、少し大きくなると図書館などで調べるようになりました。
おやつはあまり食べていなくて、子ども会でもらえるおかし袋に入っている「チョコボール」、特に<ピーナッツ>が楽しみでした。
たくさんのものやこと、人を知って、ちがいを楽しんでください。日本の中でも、場所によって自然も生き物も、人のくらしもちがいます。例えば屋久島では、木の上に別の植物が育つことがよくあります。ほかの場所ではあまり見られないことです。これは屋久島に大きな木がある上に、雨が多いので木に苔が生え、植物は苔がたくわえる水を吸って成長できるためです。なぜ高い場所に根をはるかというと、鹿に食べられないためではないかと考えられています。一つの木にも屋久島ならではの自然の話がかくれています。
身の回りでも気になったものやことをよく見て、調べて人と話してみると、新しい発見や自分とちがう考えに出会えて楽しいですよ。「何だろう?」「なぜだろう?」と思うことから、見ている世界が広がります。その先に「できること」を考え行動する。それは、多様な生き物がくらす美しい日本、地球を守ることにもつながると思っています。
苔の森で有名な
白谷雲水峡
プロフィール
静岡県生まれ。大学を卒業後、国の機関である環境省に入る。
レンジャー/自然保護官として沖縄、和歌山、長野など全国各地の国立公園などで働いた後、2020年7月から屋久島で活動している。
※2021年9月現在