科学の目からいどむ
「ストップ!
地球温暖化」
ヤバい!
地球の温度がどんどん上がっていて、
このままだと大変なことになるらしい。
自然災害がふえていることにも
関係しているんだ。
江守先生はそれを、科学的なデータを生かして
くい止めようとしているよ。
地球温暖化を放っておいたらどうなるか、どれぐらい対策をしたら止まるのかといったことを研究する仕事です。最近は、CO2(二酸化炭素)をどのように減らしていけばよいのかを考えることに力を入れています。
地球温暖化は、人間の活動によって温室効果ガス※、特にCO2(二酸化炭素)がふえることが主な原因とわかっています。電気を作ったり、車を動かしたりするために石油・石炭・天然ガスを燃やすとCO2(二酸化炭素)が発生します。それが増えすぎると、地球が熱をためすぎて気温を上げてしまいます。
世界の平均気温は、人間がCO2(二酸化炭素)をたくさん出し始めた18~19世紀の産業革命の前と比べて1.2度上がっており、これが1.5度をこえるとほんとうに危ないと言われています。例えば、今もふえている大雨などの記録的な異常気象が、もっと起きやすくなります。
さらに、ある温度を上回ると、北極圏の氷がとけるのが加速するなど、色々な被害がすさまじいスピードで悪化し、止められなくなると考えられています。
世界にはすでに住む所や食べ物がなくなるなど、大変な被害を受けている人がいて、その多くはCO2(二酸化炭素)をほとんど出さない貧しい国です。豊かな国の人がCO2(二酸化炭素)を出し、そうじゃない人が命にかかわる被害を受けています。
同じように、このままでは今の子どもたちは、自分は悪くないのに、さらに被害がひどくなる地球でくらさなければならなくなります。そうならないよう温暖化を止めなくてはいけません。
※温室効果ガス:地球から宇宙に逃げる熱の一部を取り込み、地球の周りを温めている気体のことで、その代表がCO2(二酸化炭素)。もし温室効果ガスがなければ地球の温度はマイナス19度まで下がってしまうと言われるが、今は増えすぎて地球温暖化が進んでいる。
高校2年生の時、ウクライナのチェルノブイリという所で原子力発電所(原発)の事故がありました。日本でも原発についての話し合いが活発になったのですが、意見を聞いても何が正しいかわからない。それをわかるようになりたい、自分の考えた答えをみんなに聞いてほしいと思ったのが、科学者をめざしたきっかけです。
そして、大学生の時に地球温暖化の問題を知りました。これにも色々な意見があり、本当はどうなのかを研究しようと思いました。
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
もともと社会の問題への興味からスタートして、自然への興味がそれほど強くないので、科学的な論文がなかなか書けないなど、ずっと苦労しています。
でも、楽しいこともたくさんあります。
気温、雨や風などの気候は自然界の法則にしたがって変化しており、その法則を数式にすることで、コンピューター上で気候の変化を再現できます。これを「気候モデル」とよび、以前はその研究を中心に行っていました。大気や海や植物など、色々なことが関わってくるので、研究はそれぞれを専門とする人たちといっしょに、何十人ものグループで行われました。みんなで力を合わせてつくったコンピュータープログラムが動き出し、結果が出た時はとてもうれしくて、感動しました。
地球温暖化による気温の変化を
予測する江守さん
小さいころはカンけりや野球などで遊んでいましたが、少し大きくなってからはプラモデルに夢中でした。よく食べていたおかしはチョコボール。勉強は、法則をわかって解く算数などは得意でしたが、覚えるものはちょっと苦手でした。
中学生の時にパソコンを買ってもらうとのめりこみ、自分でゲームを作って遊んでいました。当時パソコンのある家はまだ少なかったのですが、親がこれからは必要だと考えたのかもしれません。おかげでプログラミングでは苦労することはなく、仕事でもゲームのような感覚で取り組めました。
ぜひ覚えておいてほしいのは、「常識は変わる」ということです。つまり、世の中の「あたりまえ」は30年くらいすると変わります。例えば、以前はどこにでもタバコをすっている大人がいましたが、今はそうではありません。
地球温暖化も、いろいろ我慢してCO2(二酸化炭素)を出すのを減らすのではなく、エネルギーが全て再生可能エネルギーになり、CO2(二酸化炭素)を出さないのが常識、という社会をつくることが大切です。
みなさんも今の常識のワクで考えないで、どうしたら常識が変わるかを考えてください。そのためにも、世界で起きていることに関心を持ってください。インターネットで遠くの人ともつながれる今、同じことを考えている世界中の人とつながることで、一人ではできないようなこともできるようになります。
子どもたちへの教育にも力を注いでいる
プロフィール
東京大学の学生の時に、国立環境研究所で地球温暖化の研究を始め、1997年から同研究所に勤務。地球温暖化のリアルを本やイベント、YouTubeなどで広く発信し、環境研究と社会をつなぐことで対策を進める研究・活動に取り組んでいる。