サステナブルなお仕事No.9

宇宙うちゅう工学研究者

能見のうみ 公博まさひろさん


宇宙うちゅう工学研究者

能見のうみ 公博まさひろさん

“ひも”つき人工衛星じんこうえいせい
「宇宙ゴミ」をそうじしよう
「サステナブル」は地球上だけのことじゃない。
地球の周りに、役目を終えたり
こわれたりした人工衛星やロケット、
そのかけらなどがただよっていて、
「宇宙ゴミ」とよばれ、問題になっているんだ。
能見先生は、ひものついた
小さな人工衛星を作り、
「宇宙ゴミ」のそうじに役立てようとしているよ。
 
 
※人工衛星:地球の周りを飛んで、陸や海を見守ったり、地図アプリなどに示される人やモノの
位置の確認かくにん、天気の情報じょうほうを送るなど、色々な働きをしたりするもの  
Q1.
どんなお仕事クエッ?
宇宙で動くロボットや人工衛星などの研究です。今は、テザーとよばれるひもをつけた人工衛星の開発を中心に行っています。宇宙空間でひもをあやつり、色々な目的に使おうと考えています。
目的のひとつが「宇宙ゴミ」のそうじ。これまで、人間が色々なものを宇宙に飛ばしてきましたが、「宇宙はものすごく広いから、気にしなくてもだいじょうぶ」と思い、後のことは考えていませんでした。ところが、ゴミがどんどんふえてキケンになっています。

地球の周りには、生活をささえる人工衛星がいくつも飛んでいますが、ゴミがたくさんあるとぶつかってこわれてしまいます。だからへらそうとしているのですが、コントロールできない宇宙ゴミは高速で回転しながら動いていていることがあり、つかまえるのがむずかしいのです。
そこで考えたのが、ひもの先であみを広げてつかまえる方法。かんたんそうだし、費用ひようもおさえられます。でも、空気のない無重力の宇宙で網がどう動くのか、わからないことも多いので、つかまえそこねてゴミが広がることがないよう、何度も実験し、できるかを確認かくにんしていきます。

さらに、ゴミから取り出した部品などをリサイクルすること、それを続けていく方法も考えています。
能見先生が開発した人工衛星
能見先生が開発した人工衛星。一辺10センチメートルの立方体が3つ連結している。
宇宙空間では3つにわかれてひもでつながり、ゴミの回収などのミッションにいどむ。
宇宙ゴミをつかまえようとしている(イメージ図)
能見先生は、人工衛星をつないだひもに網をつけて、
宇宙ゴミをつかまえようとしている(イメージ図)
Q2.
なぜ、そのお仕事を選んだクエッ?
宇宙が面白そうだったからです。子どものころから面白いと思い続けたことが、仕事になりました。
今は大学でも、ふつうの会社でも人工衛星を作って飛ばし、宇宙旅行や宇宙ホテルといった話も出てきて、宇宙が身近になってきています。でも、ぼくが大学生のころは、研究していたのも特別な所だけ。だれもやっていないようだからやろうと決めました。
あと、何かを作ることも好きだったので、宇宙で動くものの研究を選びました。
Q3.
仕事で苦労したこと、感動したことは何クエッ?
研究は何人かで行いますが、持っている力も考えも、やる気も人それぞれ。デコボコを調整しながらゴールに着くのは大変です。大事なのはそれぞれのいい所を活かすことですが、かんたんではありません。また、創造そうぞう力がふくらむよう、義務ぎむ感ではなく興味きょうみを持って取り組んでほしいと考えています。
その成果が出た時は、とてもうれしいですね。一番うれしかったのは10年以上前のこと。世界的な宇宙研究機関「JAXAジャクサ」が初めて、H-IIAロケットに乗せる小型人工衛星を募集ぼしゅうしました。それに研究室のみんなで作ったものが選ばれたのです。
※JAXA
宇宙航空研究開発機構。日本の宇宙開発利用を技術で支える機関。基礎研究から開発・利用まで行う。

※H-IIAロケット
日本の主力大型ロケットで、人工衛星や探査機を打ち上げるミッションを支えている。
Q4.
どんな子どもだったクエッ?
小学生のころはプラモデルを作るのが好きで、自転車で走り回るなど、外でもよく遊んでいました。おやつでよく食べていたのはチョコレートなどのお菓子です。
勉強は、覚えるのはきらいだけど、考えるのは好きでした。テストも問題をとくのはクイズみたいで面白かった。でも、そのための勉強や、人とくらべられるのはイヤで、点数が悪くても、わからなかった問題がわかるようになればいいと思っていました。受験の時はそれでちょっと大変でしたが……。
Q5.
未来の大人たちへ
将来しょうらい何をするかちゃんと決めた方がいいという声も多いですが、「何かを見つけなきゃ」と無理に見つける必要はなく、大切なのは、ふだんの生活の中で面白いことが見つけられるような行動や考え方だと思います。

そして、好きなこと、やりたいことがある場合は、思い続けることです。ただ、宇宙のこともそうですが、世の中は変わっていくので、「これじゃなきゃダメ」とはならない方がいい。
サステナブルに関しても同じで、自分で「面白そうだな」と思えたことを、やわらかい頭で、思い続けることが重要だと思います。
プロフィール
2000年に香川大学で、宇宙ロボットや小型人工衛星、月面着陸機などの研究をスタート。2014年に静岡大学へうつり、多様なプロジェクトが進行中。人工衛星につけたひもを宇宙空間でのばしたり、まき取ったりする実験など、世界初の成果もあげている。