インフルエンザと免疫力、ココアの関係
インフルエンザについて
インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症であるインフルエンザは、毎年寒くなるとともにその患者は増えていきます。日本では通常12月〜3月に流行しますが、これは低温で乾燥している冬に空気中のインフルエンザウイルスが生存しやすいためです。
インフルエンザウイルスはA型、B型、C型の大きく3つに分類され、毎年世界中で流行を繰り返すごとに変異株が生まれています。中でも多くの変異株があるA型が大流行することが多いのですが、例えば鳥インフルエンザなどは渡り鳥によって世界中に運ばれているため、新しい変異株の登場(「新型インフルエンザ」と呼ばれます。)とともに、その年にどの型が流行するのか予測することはたいへん難しいものなのです。
どのような型のインフルエンザであっても、風邪と比較すると熱やのどの痛みなどの症状が重くて、特に乳幼児や高齢者の方では重症化や合併症を引き起こすこともあるため、注意が必要です。私たちの生活に大きな影響を与えるインフルエンザ。できる限りの予防を心がけていきたいものですね。
ココアとインフルエンザウイルスについて
まず、ポリフェノールなどを多く含むココアで、いくつかのインフルエンザウイルスに対する効果を確認する研究を行いました。
培養した細胞で、A型のインフルエンザウイルス2種、B型1種、さらに鳥インフルエンザウイルス2種を加えた5種のウイルスを対象に、感染を抑える効果を調べました。
この結果から、試験管内での細胞培養による実験ではインフルエンザウイルス5種すべてのウイルスで、通常飲まれているココアの濃度(約3.5%)以下でもインフルエンザの感染を抑える効果があることがわかりました。
さらに追加した実験からは、インフルエンザウイルスの感染を抑える成分として、ポリフェノール性と非ポリフェノール性の2種類の成分が確認されています。
ココアと免疫について
次に、インフルエンザA型(H1N1/pdm09)ウイルスワクチンを接種したヒトが、ココアを飲むことで免疫力が変化するのか、臨床実験により確認しました。
《試験内容》
インフルエンザ罹患歴がない健常な成人男女123名に参加いただき、インフルエンザワクチン接種の前後3週間に毎日1杯のココアを飲んだグループ(ココア摂取群)と、ココアやチョコレートを摂取しなかったグループ(対照群)の二つに分け、ワクチン接種後の免疫応答を比較しました。
《試験結果》
自然免疫力の一つであるナチュラルキラー細胞の活性力(NK活性)を調べたところ、両群ともにワクチン接種後は活性化したものの(図1)、獲得免疫である中和抗体価はココア摂取群でより高い活性増加率を示しました(図2)。
出典:J Sci Food Agric. 2016 Mar 15
免疫について
異物と呼ばれるウイルスや細菌といった病原体や花粉・ハウスダストなどの物質から、体を守る防御システム。ヒトの免疫は、自然免疫と獲得免疫に大別されます。
自然免疫
すべてのヒトが生まれながらに備わる免疫。侵入してきた病原体などの異物や癌細胞など異常になった自己の細胞を感知して、それを排除する仕組みです。
NK(ナチュラルキラー細胞)活性
自然免疫の一つ。ウイルス感染細胞や癌細胞を認識して攻撃・破壊して殺す働きがあります。
獲得免疫
感染した病原体を特異的に見分け、記憶することで、同じ病原体に出会った時に効果的に病原体を排除できる仕組み。
この仕組みを利用したのがワクチンで、ワクチンを接種することにより、 ウイルスや細菌などの病原体に対する免疫をつくりだし、病気になりにくくするものです。
中和抗体
獲得免疫の一つ。ウイルスの感染を抑制する働きがあります。
インフルエンザの予防について
インフルエンザを予防するために予防接種を受けることはもちろんですが、日常生活においては次のようなことに気をつけましょう。
そして、ホットココアを飲んでほっと一息。