世界のココア〜メキシコ〜

メキシコは、カカオが世界で初めて飲まれた国です。2000年以上前から飲み継がれているといわれるカカオのドリンクがあります。また日本でいうココアは、「ショコラテ」と呼ばれ人々に愛されています。

ユカタン半島のメキシコ湾岸に広がるタバスコ州は、熱帯気候で、昔からカカオ栽培が盛んです。古代マヤの時代からこの周辺に伝わる「ポソレ」というカカオドリンクは毎日の生活に欠かせません。ポソレは、カカオとトウモロコシで作る冷たい飲み物。ここマヤの地では、何千年も昔から飲まれており、今でも家族みんなに愛されています。(ボソレの作り方、写真)
炎天下のカカオ農園で仕事をする男性たちにとって、頭をシャキッとさせてくれる「ポソレ」はなくてはならない特別な飲み物だといいます。ポソレを作るのは女性たちの仕事。祖母や母から教わり、また次の世代へと伝えていくのです。

ボソレの作り方

  • ➊土の鍋でカカオ豆を炒る。3kgのカカオで約1時間炒り、その後皮をむく。
  • ❷メタテという石の台にカカオ豆をのせ、マノという石の棒で擦る。
  • ❸トウモロコシは生のまま細かく潰していく。
  • ❹潰したカカオとトウモロコシを手で混ぜてこね、塊に。
  • ❺ボソレの塊を水で溶いて、 ザルの中でこして、出来上がり。

メキシコ・シティの南東に位置するオアハカ州。サポテカ族やミシュテカ族など多くの先住民が住んでおり、民族文化が色濃く残っている場所です。ショコラテで有名なオアハカ市ですが、ここには、伝統のカカオドリンク「テハテ」があります。
材料は、トウモロコシの粉、すりつぶしたカカオ、乾燥させたカカオの花、アーモンドとマメイというフルーツの種をすりつぶしたものです。大きなボールの中に材料を入れて、冷たい水を上から勢いよく注ぎ込んでかき混ぜると、徐々に白い小さな塊が、まるで花のようにフワッと浮いてきます。
不思議な飲み物「テハテ」は、オアハカ名物のカカオドリンクです。

標高2000mに位置するメキシコの首都、メキシコ・シティ。アステカ帝国の中心地として栄えた街にも、独特のカカオドリンクがあります。1日の寒暖の差が激しい高地ならではの「アトレ」が、体を暖めて芯から元気にしてくれます。
「アトレ」とは、トウモロコシの粉にカカオやミルクを入れた、大昔から飲まれている暖かい飲み物です。寒い朝には一杯のアトレ。これが元気の秘訣のようです。
アトレに欠かせないのがタマル。トウモロコシの粉をよく練った中にホットソースを入れ、トウモロコシの皮やバナナの皮に包んで蒸す、メキシコ版のちまきといったところ。屋台によってホットソースが違い、鶏肉を入れたものや、スパイシーなトマトソースもあります。食べる感覚はファーストフードでも、かなり手が込んでいます。

アステカ帝国時代まで苦かったショコラテが甘いショコラテになったのは、16世紀の半ばにメキシコがスペインに征服されてから。スペインから砂糖が伝えられ、グァナファトやオアハカの修道院の尼僧がカカオペーストに砂糖を入れたのが始まりといわれています。
現在のメキシコの一般の家庭では、ショコラテは、市販の粉末のものか、もしくは棒状や円形状の塊を買ってきて、熱いお湯や温めたミルクで溶いて飲みます。粉末のものはカカオの脂肪分を抜いた、いわゆるココアで、冷たいミルクに溶けるものも人気のようです。
塊のものは、カカオを潰して砂糖を混ぜて作るものが多く、脂肪分が豊富で、その分コクがあります。とはいえ、全体的にはスペインのショコラテほどどろっとしていなく、サラッとした食感です。