ニュースリリース
小児科医師・公衆衛生の専門医/赤坂ファミリークリニック院長
伊藤明子先生との共同研究
「ココア継続飲用により子どもの精神的健康度の改善」が判明
森永製菓株式会社(東京都港区芝、代表取締役社長・太田 栄二郎)は、伊藤明子先生(小児科医師・公衆衛生の専門医/赤坂ファミリークリニック院長)との共同研究で、お湯に溶かして手軽に飲めるココアが子どもの心の健康に与える影響を検証しました。森永製菓は1919年に国産初のココアを発売以来、おいしさ、楽しさ、すこやかさに関する様々な研究を重ねてきました。今回の研究の結果、ココアを飲まなかったグループの子どもと比較して、お湯溶きココアを1日1杯4週間飲み続けたグループの子どもは、精神的健康度が有意に改善する事が明らかになりました。
詳しくはPDFをご覧ください。
研究背景と目的
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ココアの原料となるカカオ豆は「神様の食べ物」として古代文明の時代から現在に至るまで食経験を重ねてきました。ココアにはカカオフラバノールやミネラル、食物繊維カカオリグニンが多く含まれます。古くは薬としても用いられていたほど、体感としてリラックスや活力を感じることができるとされています(文献1)が、この科学的な根拠はまだ十分ではありません。森永製菓は、日本で初めてカカオ豆からのチョコレート一貫製造を実現したパイオニアとして、25年以上にわたりカカオの健康への作用を中心に研究を行ってきました。これまでは、主に健康な成人の体の機能に関する研究が中心であり、心の健康、特に子どもに関する研究は行われていませんでした。
近年、コロナ禍・少子化・親の過干渉・受験・深夜におよぶスマホでのゲーム・偏食などの様々な要因により、子どもが抱える心の健康問題が多様化、深刻化しています。(図参照)また、そのような状況にお悩みを抱えている保護者も多くいます。そこで本研究では、子どもの心を取り巻く諸課題に対して、子どもでも手軽においしく飲めるココアの摂取が、発達期の子どもの心の健康度に与える影響を検証しました。
研究手法
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本研究では、心身の発達期である12歳の健康な子ども(男女35名)を対象としてランダム化単盲検並行群間比較試験を行いました。男女を均等にココア飲料を摂取するグループと摂取しないグループの2群に分けました。摂取するグループは、4週間毎日1日1杯のお湯に溶かして手軽に飲めるココア(風味調整ココア粉末24g)を各ご家庭で飲んでいただきました。摂取しないグループは通常の生活をしていただきました。両グループとも、試験期間4週間はチョコレートやココアのようなカカオを含む菓子・食品などの摂取は控えていただきました。
摂取期間の前後で、GHQ 12(General Health Questionnaire 12)という質問票にて、子どもの精神健康度を評価しました。また、摂取期間の前後で採血も行い、血液成分の分析も併せて行いました。
なお、この研究はヒトを対象とした医学研究の倫理指針に従い、第3者機関の倫理審査承認を得て実施しました。
研究結果
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研究の結果、ココア飲料を4週間毎日飲み、計画通り試験が実施できた18人は、計画通り試験が実施でき、飲まなかった17人と比べて、精神的健康度のスコアが有意に改善方向に動きました。また、血中のジホモγリノレン酸(DGLA)という物質の変化量が、ココア飲料摂取群で有意に高値を示しました。DGLAは、リノール酸からアラキドン酸への代謝経路の中で生成される物質で、うつのリスク低下と関連する物質であるということが大規模疫学調査で報告(文献2)されています。
※本データに関しては、現在小児の公衆衛生領域の権威ある国際医学雑誌に論文投稿中です。
小児科医師・公衆衛生の専門医/赤坂ファミリークリニック院長 伊藤明子先生のコメント
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森永製菓様とはこれまでも、コラーゲンやパッションフルーツ種子エキスの健康機能についての共同研究を多く実施していますが、ココアについては今回が初めての取り組みとなります。ココアはポリフェノール(カカオフラバノール)やミネラルを多く含む健康素材です。ココアの体の健康に関する報告は多数出ていますが、「心」、特にお子様の精神的健康度を改善するといったデータが取れたことは、普段からお子様を診ている小児科医としても非常に興味深い結果です。また、関連を示唆する血液指標が動いたことは、ココアが心の健康に与えるメカニズムの1候補としての可能性を示すことができたかもしれません。今回、ココアのどの成分が効果をもたらしたかまでがわかる試験設計ではないですが、さらなる科学的検証が期待されます。また、お家でココアを一緒に作ったりすることも、親子のコミュニケーションツールの1つとして活用されてはいかがでしょうか。
伊藤 明子(いとう みつこ)
小児科医師、公衆衛生の専門医。同時通訳者。東京外国語大学イタリア語学科卒業。帝京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院小児科医師。東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻修了。同大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員。
2017年より赤坂ファミリークリニック院長、NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。
森永製菓グループの新たな取り組み
- 当社グループでは、長期経営計画において『2030年にウェルネスカンパニーへ生まれ変わります。』と定めました。「ウェルネス」とは、「いきいきとした心・体・環境を基盤にして、豊かで輝く人生を追求・実現している状態」と定義し、顧客・従業員・社会に、心の健康、体の健康、環境の健康の3つの価値を提供し続ける企業になることを目指しています。その一環として、「心の健康」に寄与する菓子食品のおいしさや楽しさといった情緒的価値を様々な手法で解明し、付加価値の高い商品の開発・提供につなげていく取組みを行っています。本研究も、ココアがお客様の情緒的価値を明らかにする目的で行われました。これからも、ココアを通じて世界の人々に笑顔をもたらすことができるよう取り組んでまいります。
参考文献
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(1)Malays J Pathol. 2013 35(2):111-21.
(2) J Affect Disord. 2017 Apr 15;213:151-155.