医師と考える食育

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不調を改善し、老化を防ぐ「腸活」①
心身の健康に深く関わる腸内環境

「腸活」とは、腸を整えて、健康的なからだを目指す活動のことです。近年の研究によって、腸は免疫の向上や、美肌、老化防止、メンタルヘルスなど心身のさまざまなことに深く関係していることがわかってきました。

腸のすごい働きについて、京都府立医科大学大学院教授の内藤裕二先生に伺いました。

内藤 裕二 先生

(京都府立医科大学大学院医学研究科 生体免疫栄養学教授)

専門は腸内微生物学、抗加齢医学、消化器病学。農林水産省農林水産技術会議委員、2025大阪・関西万博 大阪パビリオンアドバイザーを兼務している。

腸は「第二の脳」

腸が整うと、セロトニンも増え、腸から脳へよい影響が伝わる

人は受精卵から細胞分裂して胎児に育っていきますが、最初にどの器官から作られるか知っていますか? いちばんはじめにできるのは、脳や心臓ではなく、腸なのです。

そんな生命の源ともいえる腸は、食べたものを消化し、吸収する役割が知られていますが、腸の働きはそれだけではありません。腸にはからだ全体の7割の免疫細胞が集まっていて、ウイルス・細菌の侵入や増殖を防いでいます。

また、腸は「第二の脳」ともいわれ、意欲や快楽を感じるドーパミンの50%、精神を安定させたり、体内時計を調整したりするセロトニンの90%が腸で作られています。腸の働きがよいと、幸せな気持ちになり、朝の目覚めもよくなるというわけです。

腸が整うと、セロトニンも増え、腸から脳へよい影響が伝わる

全身の健康を左右する腸内細菌

腸内フローラ 約1000種類、約100兆個

腸は大腸と小腸に分かれていますが、その環境をコントロールしているのが「腸内細菌」です。私たちの腸には、約1000種類、100兆個もの腸内細菌がすんでいて、じつに多くの働きをしています。最近の研究で、腸の働きを助けるだけでなく、健康効果をもたらすさまざまな物質を作り出すこともわかってきました。腸内細菌は腸の居候ではなく、健康維持に欠かせない重要な存在というわけです。

腸内フローラ 約1000種類、約100兆個

腸内環境を整えると、美容にも老化予防にもなる

腸内フローラのバランスがくずれ、腸内細菌が同じような種類ばかりになって腸内環境が悪化すると、下痢や便秘、肌荒れが起こりやすくなります。

さらには、潰瘍性大腸炎やクローン病、大腸がん、脂肪肝、糖尿病、肥満、貧血、動脈硬化、腎臓病、アレルギー疾患、うつ病、認知症など、さまざまな病気を引き起こすこともわかってきました。

つまり、腸内細菌が多様性に富んでいることが、健康を維持するためにとても重要なのです。

また、からだの不調だけでなく、シミやシワなどの老化にも影響していることも研究でわかってきています。老化を防止し、いつまでも若々しくいるためにも腸内環境を整えていきましょう。