2009年~2011年
ガーナ共和国は、世界の主要カカオ生産国のひとつです。カカオ豆の生産は、同国の重要な産業のひとつですが、近年はカカオ栽培の近代化による雇用の減少により、カカオ栽培農家は以前のように収入を得ることができなくなっています。
また、農地不足により、農業を主な収入源とする農村部の住民たちの生活は厳しく、農村部の46%の人が、国の定める貧困ライン以下の貧しい生活を強いられています。
農村部の人々は、教育や保健をはじめとする社会サービスへのアクセスが限られており、特に教育を受ける機会が欠如していることは農村部に暮らす子どもたちにとって深刻な問題です。その結果、農村部の非識字率は6割以上に達しています。
政府は1992年に憲法を改正し、小学校・中学校の義務化と無償化を実施し、基礎教育の拡充を目指していますが、農村部では教育の重要性に対する理解不足や、低い教員の質などにより基礎学力は低い水準にとどまっています。また、子どもたちの間で寄生虫蔓延率が高く、学校を欠席する児童が多いこともその一因になっています。2004年に実施された学力テストによると、都市部では算数で85.9%、英語で65.7%の子どもたちが合格点に達しているのに対し、農村部では算数34%、英語15%と、基礎学力は大幅に低くなっています。
児童の学習能力の低下を助長する原因として、校舎の老朽化や学校設備の不足による学習環境の不備も憂慮されます。また、農村部の学校では、教科書や図書、授業に必要な教材、ノートなどの学用品、学校設備も不足しています。
このような状況を改善するために、このプロジェクトでは、アッパー・ウェスト州のワ地区とトゥム地区、ボルタ州のボルタ地区、イースタン州のボージアーシー地区にある50のコミュニティにおいて、下記の活動を予定しております。
ボージアーシー地区の1コミュニティとその他の3地区から1コミュニティを選び、それぞれの地域で教室備品を備えた6教室と図書室からなる小学校校舎を建設します。約300人の児童が設備の整った環境で勉強できるようになります。
50のコミュニティにある各学校に通う約8,000人の児童に、教科書や副教材、ペン、消しゴム、鉛筆などの学用品を支給します。
50のコミュニティにある各学校の学校運営委員会メンバーに、効果的な学校運営と学校の機能向上のためのトレーニングを行います。
50のコミュニティの中から2つの図書館を選定し、教材と図書を支給します。
このプロジェクトの実施により、50のコミュニティに住む6歳から15歳のおよそ8,000人の子どもたちが改善された学習環境で学ぶことができるようになります。学習環境が整備されることにより、児童の約6割が英語と数学で合格点を取れるまでに学力が向上することが期待されています。さらに長期的には、より多くの子どもたちが充分な知識を得て成長することにより、地域全体が貧困から少しずつ脱却していくことに貢献します。
このプロジェクトの実現は、MDGs(国連ミレニアム開発目標)目標2:初等教育の完全普及の達成に貢献します。
このプロジェクトは、住民参加型です。教育省ガーナ教育サービス、郡議会といった行政機関に加えて、地域の人々が、計画立案から、実施、進捗管理、評価などプロジェクトのすべての段階に関わり、プロジェクトを中心となって進める役割を担います。地域の人々が計画段階から参加することによって、プロジェクトが自分たちのものであるという意識が強まり、プロジェクト完了後も地域の人々によって学校や図書館が効果的に運営され、プロジェクトによる成果が継続していく体制が出来上がります。