2009年~2010年
フィリピンでは、マニラの現地事務所を拠点として住民参加型の地域開発活動に取り組んでいます。
フィリピン政府の教育問題への関心は以前より高くなっているものの、経済環境や債務返済が優先され、教育に割ける予算に限界があるため、(2006年度予算では全体の14%)フィリピンには下記のさまざまな問題を抱える学校が数多く存在します。
フィリピンでは1クラス当たりの平均生徒数が55人と、他のアジア諸国と比べても多く、4万4000室以上の教室が不足しているという統計もあります。
教室は老朽化し、壁や窓は壊れ、屋根は雨漏りし、床が平ではない学校がいくつもあります。一番近いハイスクールまで5〜7キロメートル歩いて通う生徒もいます。
教授法トレーニングを積んだ教師の不足が、子どもたちの基礎学力の低迷化を招いています。特に主要科目においてその傾向が顕著に現れています。
活動地域では、小学校就学率78%に対して修了率は51%となっています。中途退学の理由には、学習への関心の欠如、地理的条件、周囲のサポート不足などのほか、健康上の問題が挙げられます。
このプロジェクトを実施するサマールウエスト州ダラム町のソーン村、トゥガス村、カサバハン村、バクラヤン村も上記のような教育問題を抱えています。4つある小学校のどの校舎も老朽化している上、生徒数が増加し、適切な教育環境として機能するために十分なスペースが確保できない状態となっています。
窓の上部が壊れているため、雨の日には教室が水浸しになります。ドアも木の板がはがれ、生徒が怪我をする危険があります。机もいすも足りず、教室は込み合っています。
竹で造られた簡易教室には、風雨や強い日差しが入り込み、生徒たちは授業に集中することができません。激しい雨の日には、しばしば授業が中止になります。
木の板でできた壁や窓は老朽化が進み、天気の悪い日にはすき間から雨や風が入り込みます。
トタン屋根が壊れ、危険な状態の校舎。
このような状況を改善するために、このプロジェクトでは、前述の4村にある小学校、保育所、地域保育グループにおいて、教育支援プロジェクトを実施します。よりよい学習環境を提供し、初等教育への就学率、修了率の改善を実現するため、以下の活動を行う予定です。
教師に対して、子どもの積極的な授業参加を促す指導、社会的性差についての指導、発育と児童心理学、カウンセリングの基本、地域独自の学習教材の開発と活用などに関するトレーニングを実施します。
7教室の建設、備品や設備の供給、家庭科室の改善、読書コーナーの設置、図書の支給を行い、安全で効果的な学習環境を提供します。
乳幼児保育のサポート、保護者などのトレーニング、地域住民と協力した地域保育グループ強化を実施します。特に、家庭でも男女平等について教育できるよう指導します。食糧供給や栄養補給を通じても、子どもの成長促進をします。
子ども、保護者、地域住民に対し、学校改善活動を働きかけていきます。生徒会、親・教師・地域住民の会(PTA)、学校運営委員会の組織強化を実施します。
教育省など政府機関の方針に沿って、子どもの権利、男女平等、健康促進、地域問題、地域伝統の知恵などを加え、カリキュラムを改善していきます。ライフスキル・トレーニング、課外活動など、カリキュラムを実施するためのさまざまな方法について指導します。
このプロジェクトの実施により、4つの小学校に通う男子約500人、女子約500人の生徒たち、4つの保育所に通う女児約100人と男児約80人が直接の恩恵を受けます。長期的には、より多くの子どもたちが充分な知識を得て成長することにより、地域全体が貧困から少しずつ脱却していくことに貢献します。