私たちが普段食べているチョコレートは、カカオを原料としています。カカオは、ガーナをはじめとする、主に赤道の南北緯度20度以内の「カカオベルト」とい呼ばれる熱帯雨林の地域で育ちます。
カカオの樹が育つためには、平均気温27度以上、年間を通じて温度差が少なく、高温多湿という環境が必要です。また、苗木の段階では、風除けや日除けのためのシェイドツリーと呼ばれる樹木や遮光シート等も必要です。
カカオは、樹の幹に直接白やピンクの小さな花が咲き、実を育てる植物です。実はカカオポッドと呼ばれ、緑や赤褐色に加え、熟すと黄色やオレンジ色等に変わり、とてもカラフルです。大きさも様々ですが、その形はまさにラグビーボールのようです。
カカオの堅い殻をナタ(刃物)で割ると、白いパルプ(果肉)に覆われた種の部分のカカオ豆が姿を現します。カカオポッド1個に約30~40粒程入っています。この種こそがチョコレートの原料となるカカオ豆です。
収穫したカカオ豆をおいしいチョコレートに変えるためには、次に「発酵」と「乾燥」という工程が必要になります。白いパルプごと取り出されたカカオ豆をバナナの葉で覆い、6日から8日間かけて発酵させます。この過程で種子の中の成分が変化し、チョコレートの香りの基になる成分が醸成されます。
カカオ豆は発酵が終わった後、水分が多く表面がべたついているので、天日乾燥などで水分を減らします。このとき水分を均一に抜くために、手や道具を使って定期的に様子を見ながら混ぜる必要があります。このように、発酵し乾燥させることで、カカオ豆は茶色に変わり、ようやくチョコレートの味と香りを持つ原料になります。
このようなカカオ農家の方、生産者の方の丁寧な作業のおかげで、遠く離れた日本の私たちが美味しいチョコレートを食べることができます。感謝の気持ちを込めて、1チョコ for 1スマイルの支援地域の農園で収穫されたカカオ豆を使用したチョコレートのクッキーをカカオ農家の方にプレゼントしました。
「クッキーを食べる、彼らの笑顔が忘れられません。」
カカオ農園での体験を通じて、カカオ栽培の大変さを実感しました。プレゼントしたクッキーを食べる、彼らの笑顔が忘れられません。
お話しを伺ったオセイさん(仮名)は、幼い5人の孫を育てています。年を重ねる中で、カカオ農家としての仕事はとてもきつく、腰や膝に痛みを感じているのですが、孫たちを育てるためには、カカオ農家として働くしかないと言います。
カカオ栽培は手作業が多く、重労働で危険な作業ばかり。さらに、カカオの樹の病気や害虫の被害、肥料不足により収穫量が減少し、それが収入減少につながります。カカオ生産による収入では十分に生活が成り立たないことが、子どもたちの労働に頼らざるを得ない状況を引き起こしているのです。
カカオ農園が多いガーナですが、子どもたちがカカオ生産に必要な作業を担うことも少なくありません。その結果、学校に行く機会が減ってしまい、学力水準の低下につながります。児童労働は子どもたちに深刻な影響を残すのです。森永製菓は、「1チョコ for 1スマイル」を通じて、一人でも多くの子どもたちが笑顔で学校に通える環境をつくりたいと考え、10年以上に渡り取り組みを続けています。
「カカオ農家の幸せと未来のために何ができるか」
農薬や肥料に頼らないカカオの栽培方法や病気に強い品種の開発は進められているものの、カカオ農園で働いている人々の貧困や労働力不足の課題がまだ多いことを感じました。将来的にカカオ生産を継続するためには、カカオ農家により多くの利益を還元できる仕組みづくりをすることや、スマート化などで効率と生産性の高い農業にしていく必要があると感じました。カカオ農家の笑顔があってこそ、チョコレートを食べる人の笑顔につながると思います。私たち一人ひとりにできることを考え、実行に移す必要があると痛感しています。
チョコレートソムリエとして、
カカオの未来について
ビスケット・チョコレートの研究開発を担当。マーケティング、新規事業の部署も経験し、現在はコンセプトショップのTAICHIROMORINAGAの商品開発・製造の責任者を務めています。チョコレートやお茶が趣味で、ペアリングなどを楽しむ活動も行っています。