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こちらの学校の生徒数は約200人で、幼稚園生、小学生、中学生が勉強しています※。校舎は平屋で、裏にはカカオ農園が広がります。すぐ横には住居が並んでいて、収穫されたカカオ豆が干されていました。学校に塀や柵はなく、とても明るい雰囲気です。子どもたちは制服姿で、黄色の制服がとても似合っていました。
※ガーナでは幼稚園~中学校が義務教育
教室では、子どもたちがとても熱心に授業を受けていました。小学校2年生のクラスで算数の授業が行われていました。みんな楽しそうに勉強をしていて、手を挙げて発表をした後は、みんなでリズミカルな拍手を送り合っていました。また、1チョコ for 1スマイルで寄贈した通学リュックを大事に使ってくれていました。
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算数の授業を受ける子どもたち。先生が少ないため、小学4年生と5年生が合同で授業を受けるなど、異なる学年の生徒が同じ授業を受けることもあるそうです。
1チョコ for 1スマイルでは、給食提供の支援も行っています。学校給食があることで子どもたちの出席率向上にもつながります。給食は調理を担当する住民の家の庭先で、大きな鍋で作られていました。
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今日のメニューは炊き込みごはん。右手の指を使って※、とても美味しそうに食べていました。
※ガーナでは、右手で食べるのが一般的な習慣
1チョコ for 1スマイルの取り組みを紹介する劇を披露してくれました。子どもたちが、児童労働をしている家族の家庭や、先生役、子ども保護委員の役などを演じる本格的な内容でした。プロジェクトが始まって児童労働をやめ、出席率向上につながったことを紹介してくれました。
先生方だけでなく、子どもたちがプロジェクトの全体像や実施後の変化を良く理解してくれていることに驚き、嬉しく思いました。
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子どもたちが、子ども保護委員会(村の住民からなるボランティアグループ)の様子を演じている様子。
カカオ生産国でカカオ豆を生産してくれるおかげで、おいしいチョコレートを作り、食べることができることへの感謝の気持ちを込めて、私たちからも日本の文化や1チョコ for 1スマイルについて紹介し、15周年プロジェクトでもらった日本からのメッセージも伝えました。
また、暑いガーナでも溶けない、ベイクドチョコを贈りました。ほぼ全員がカカオ農家の子どもにもかかわらず、ほとんどの子どもたちはチョコレートを食べたことがなく、とてもおいしそうに食べてくれました。
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「スペシャルチョコレートだ!」と言って喜んでチョコレートを食べる子どもたち。
「子どもたちの笑顔で、支援の意義を強く実感」
子どもたちが楽しそうに授業を受け、給食を食べている様子を見て、支援の大切さを痛感。お互いの文化や感謝の気持ちを共有し、初めてのチョコレート体験を届けることで、子どもたちとの心温まる交流となりました。
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今回、子どもたちの学習状況や課題について、2つの学校を訪問し話を聞きました。校長先生や先生のお話しによると、プロジェクトの前後で、学校に通う子どもが、ひとつ目の学校では約100人から200人ほどに、ふたつ目の学校では約60人から180人ほどにまで増えたと言います。また給食を提供できることになったことも大きな成果です。プロジェクト終了後も、PTAの寄付などで給食が継続できるような仕組み作りを行っています。
一方でまだ課題も沢山あり、不完全な校舎、教員の不足、制服や学用品の不足、給食の維持の大変さなどがあげられました。大変な環境の中でも、プロジェクトの結果、教育の重要性を大人たちが理解し、「Child labor away!(児童労働をなくそう!)」を標語にその意識が地域全体に広がったと言います。
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校長先生にやりがいを聞くと、「子どもたちが好き。子どもたちの未来を応援したい」と想いを話してくれました。
子どもたちへの愛情と子どもたちの未来に対する彼の使命感を強く感じました。
「15年の結果に誇り、未来への道筋を模索」
支援活動の成果について現地の方たちから感謝の声を聞くことができ、1チョコ for 1スマイルを15年間続けて来られたことを誇りに思います。一方でまだ課題も多く、子どもたちの安全と学びの環境がプロジェクト終了後も持続する仕組みづくりが重要だと思いました。
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多くの子どもたちがプロジェクトのおかげで学校に通えるようになりましたが、課題も残っています。中には、いまだカカオの農作業や家事を担いながら学校に通っている子どももいる現実があります。
メンサー君(仮名)(13歳)は、児童労働をしているとして、地域の子ども保護委員会から確認対象となっているカカオ農家の子どもです。父親は昔、北部から移民としてこの地に来て契約農家になりました。
現在の通学状況を尋ねたところ、小学3年生の時に学校へ行かなくなってしまったことを話してくれました。しかし、プロジェクト開始後には、父親が教育の重要性を理解するようになったことで、通学できるようになり、今は5年生のクラスに入っています。
ただ、現在でもカカオポッドの収穫や、ナタでけがをする危険が伴う草刈りなどを行っているようです。メンサー君は「草刈がとても大変でつらい」と話してくれました。
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私たちが贈ったベイクドチョコはメンサー君にとって生まれて初めて食べたチョコレートでした。
オウスちゃん(仮名)(11歳)は、第一部で話を伺ったカカオ農家のオセイさんの孫、5人兄弟の長女で祖父母と暮らしています。以前は朝から薪集めや草刈りをしていましたが、プロジェクトのおかげで、祖父母が教育の重要性を理解し、学校に通えるようになりました。
ただ現在も、平日の学校前後や休日にはカカオポッドの収穫、兄弟たちの世話、家事などを行っています。
「カカオの収穫は頭にバスケットを乗せて運ぶのが重くて足が痛い」それでもオウスちゃんは、祖父母の仕事を手伝うのは家族を支えるため、そして自分が教育を受けるためにも必要と、話してくれました。学校に通えるようになったからと言って、課題がすべて解決される訳ではないということを改めて知りました。
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学業と家族のサポートを抱えるオウスちゃん、葛藤する気持ちや将来の夢を話してくれました。
私は、ガーナで子どもたちに会えたらぜひ聞きたいと思っていたことを最後に質問しました。
――将来の夢は何ですか?
メンサー君:警察官になりたい。カカオ農家にはなりたくない。
メンサー君の父親:カカオ農園は息子には継いでほしくない。もっと輝かしい仕事についてほしい。
オウスちゃん:裁判官になりたい。なぜならプロフェッショナルな仕事だから。
私たちを笑顔にしてくれるチョコレートが、カカオの国の子どもたちの将来を奪うものにはなってはいけない、と強く実感しました。
「胸に突き刺さる、児童労働に関わる子どもたちの声」
児童労働の当事者である子どもたちの生の声は、胸に突き刺さりました。「私は裁判官になりたい。なぜならプロフェッショナルな仕事だから。」自分の娘と同い年のオウスちゃんの言葉と、少し悲しそうな笑顔が、この旅の中で1番記憶に残りました。カカオ産業、児童労働の背景と現状を学び、カカオ産業と子供たちの笑顔を持続的なものにしていく為に考え、行動していくことは、チョコレート事業を行っている企業である私たちの責務だと感じました。
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マイパーパスとつながる
1チョコ for 1スマイルの取り組みについて
菓子マーケティング部チョコレートカテゴリーブランドマネジャー。2004年入社。主に営業部経験を経て、22年から現職でチョコレートブランドの戦略立案から商品開発までマーケティング業務全般を行っています。
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